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相手:海軍大将黄猿


「オォ〜、誕生日ねェ〜……」

「うん」

 いつだったかのように会議が終わるのを待っている間、ドフラミンゴの部屋の前で大人しくしていたナマエは、現れた海兵へ向かってこくりと頷いた。
 白いコートを揺らして、黄色いストライプスーツを着込んだ海軍大将が、めでたいねェ、と微笑みながら立ったままで体を折り曲げる。
 ポケットに手を入れたままで見下ろしてくる相手を見上げながら、立ち上がったナマエは黄猿へと尋ねた。

「何あげたら、いいと思う?」

「ん〜? わっしが決めていいのかァい?」

 ナマエの問いかけに目を丸くしてから、大将黄猿が首を傾げる。
 うん、ともう一度頷いて、ナマエは膝を抱えたままで目の前の男を見上げた。

「わかんないときは、わかる人に聞く」

 基本的に、ナマエが『聞く』相手はドフラミンゴなのだが、今回はそうもいかない。
 プレゼントというのは、こっそりと用意するものらしいからだ。
 ナマエの言葉にへェと声を漏らして、黄猿はポケットから出した右手で軽く自分の顎をこすった。

「わっしだったらァ、何貰っても喜んでおくけどねェ〜……」

「なんでも?」

 寄越された言葉に、ナマエは首を傾げる。
 そうだよォと頷いて、黄猿が少しばかり目を細めた。

「何を貰ったって、それがわっしのために用意されたものには変わりないだろォ?」

 それなら喜んでおかなきゃがっかりさせるじゃないかァ、と続いた言葉に、ぱちぱちとナマエは目を瞬かせた。
 なるほど、確かにその通りである。
 ましてやいつも楽しげなドフラミンゴなら、何を貰ったって笑って受け取ってくれるに違いない。
 その姿が随分とあっさり想像できて、ナマエはむっと眉間に皺を寄せた。
 ますます、何を渡せばいいのかが分からない。

「…………んー……」

「悩んでるねェ〜」

 声を漏らすナマエに笑って、伸びてきた黄猿の手がよしよしとナマエの頭を軽く撫でる。
 小さな頭の中身をぐるぐるとさせて必死になって考えるナマエに、黄猿が何とも楽しげな笑みを浮かべているが、顔を上げないナマエは気付かないままだ。

「まァ、悩むだけ悩めばいいよォ〜」

 そんな風に囁いた大将黄猿は、どうにも相談相手には向かない相手であったようだった。



end


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