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突発(OP×DB)
知識有り転生(DB)して成人→OPへ幼児化異世界トリップ
※特殊設定※
主人公は宇宙人×地球人クォーターかもね!





 ひょんなことで死んでしまったのは、もう随分と昔のことだ。
 俺はどうしてか人生をやり直し、ジャンプと言えばこれだよね!的少年漫画の世界に生きている。
 しかも現在二つ目を経験中だ。
 こんな経験、なかなか無いんじゃなかろうか。

「重そうだな〜」

 ジョズ並にでかい荷物を運んでいたら、誰かが俺の抱えている荷物を掴んでそう言ってきた。
 そこにいるのが誰なのかは気配で分かっていたから、荷物の影からそちらを見ることもなく、俺は答える。

「大丈夫だよサッチ。これくらいなら」

 このくらい、今の体の実の父親に課せられていた訓練に比べたら綿みたいなもんだ。
 カプセルコーポレーションの重力室が恐ろしくも懐かしい。

「働きもんだよなァ、ナマエは」

 俺の言葉に楽しそうに言って、サッチのほうがひょいと荷物の向こうからこちらを覗き込んできた。
 そうして俺より随分大きな腕が俺から荷物を半分取上げて、俺は目を丸くした。

「サッチ、それ俺の」

「よしよし、お兄さんがお手伝いしてやるよ。って、うわ、重! 誰だァこんなんを子供に押し付けた奴ァ」

 俺が倉庫へ運ぶべき酒樽やその他食料の半分を持って顔を顰めたサッチは、それでもそのまま俺が進んでいた方向へと体を向けた。
 返してくれる気配が無いので、俺もそれに倣って足を動かす。

「サッチ、今日のご飯、なに?」

「ん? ああ、そうだなーさっきマルコが帰ってきたから、島があと少しでつくってんなら野菜をちょっと多めに使っちまうところだけど」

「マルコ?」

 何にするかなーと呟いたサッチの台詞に聞き捨てならない単語を聞いて、俺は歩きながらサッチを見やった。
 言われて探ってみれば、確かに船内にマルコの気配を感じる。どうやら白ひげのところにいるようだ。
 雰囲気からして、元気そうだ。
 新しい島を見に行くと言ってマルコが船から飛んで行ったのは、もう三日も前になる。
 俺もその背中にしがみつくなりしてついていこうとしたのに、周りの奴らに止められてしまったから駄目だった。
 血筋のおかげで体だけは頑丈だから、危ない目に遭ったって平気なのに。
 実際、海戦の余波を受けても転んでコロコロ転がる程度で怪我一つしないことを知ってるくせに。
 元いた世界では通じた常識が、この世界では通じない。
 まあ、この世界には願いを叶えてくれる宝珠も異星人も戦闘民族もいないみたいだから仕方ないんだろうけれども。
 そうそうマルコ、と答えて笑い、俺の隣を歩いているサッチがこちらを見下ろした。

「倉庫の帰りに会いに行ってくれば? アレ見せたいんだろ」

「……うん」

 どうやら俺がそわそわしているのに気付いているらしいサッチは、にやにや笑っていた。







「マルコ、お帰りー!」

 甲板に特徴的な髪型を見つけて、荷物を倉庫へ置いて自由の身になっていた俺はそこめがけて駆け寄った。

「! 止まれよい」

 俺が近付いてくるのに気付いたマルコが、掌をこちらへ向けて制止を掛けてくる。
 寄越された命令どおりに走るのを止めると、慣性の法則でちょっと滑って、甲板が俺の足の裏で少しばかり焦げた。熱い。

「ナマエ、走ってくんなって言ってんだろい」

「普通は感動の再会の飛びつきくらい受け止めてくれると思う」

 呆れたように言われて、不満を口にしながら俺はとりあえず目の前の体を両手でがしりと抱えた。
 受け止めてたら骨が折れちまうよい、と何とも人聞きの悪いことを言って、マルコの手が俺の頭を軽く撫でる。
 中身はどれだけ成人していると言い張っても、マルコや他のクルーたちの俺への子ども扱いは止まらない。
 なのでもう気にすることなくその手を受け入れながら、俺は下からマルコを見上げた。
 マルコは、俺がこの世界の海に落ちていくところだったのを助けてくれた奴だ。
 成人していたはずの体がどうしてか子供の大きさにまで若返って、うまく舞空術が使えなくなってしまっていた俺を助けてくれた。
 そして助けてくれたマルコと一緒にモビーディック号へと降り立った俺は、そこにいた白ひげとエースにここが自分がいたのとは違う世界だっていうことを理解した。
 もう昔の記憶過ぎて細かくは覚えていないが、エースと白ひげは特徴もありすぎるし見せ場もものすごかったから、おぼろげながらもちゃんと覚えている。
 つまり俺には帰るあてが無かったので、それから俺は白ひげ海賊団になった。

「マルコ、島見てきたんだろ? どんなだった?」

「ん? ああ、誰かのナワバリってわけでも無さそうだったねい。酒と食料については手配させたから、明日つく頃には少しは用意できてるだろい。ログも一週間は掛かるそうだから、いい羽伸ばしになるんじゃねェかい」

「ふうん」

 しっかり調査してきたらしいマルコに相槌を打ちつつ、俺は両手でぐっとマルコの体を抱え直した。
 腕に篭った俺の力に気付いて、マルコが頭を撫でていた手を止める。

「ナマエ?」

「マルコ、口閉じて。行くからな」

「は? どういう、」

「せーの!」

 戸惑った顔のマルコが声を漏らすのを遮るように声を上げてから、俺はそのまま足に力を入れた。
 ぶわりと体から何かが噴出して、それが足元だけに移行する。
 それと共に俺の体が浮いて、つまりは俺が捕まえているマルコの体も浮いた。

「とお!」

 子供らしく掛け声を上げつつ、そのままモビーディック号から飛び上がる。
 このまま雲までいけそうだが、あまり高いところへ行くと寒くなるから、俺はマルコを抱えたままで見張り台の少し上まで上がってから滞空した。
 俺の両腕に抱えられたままのマルコが、驚いた顔で自分より少し下にある見張り台を見下ろして、それからもう一度俺を見る。

「…………飛べんのかよい!」

「だから言ったじゃん、飛べるって!」

 頑張れば飛べるようになるんだと主張した俺を、子供のたわごとだと言わんばかりに流してくれていた一番隊長殿を見上げて、俺はにんまりと笑った。
 俺の言葉に、なるほど、とマルコが言う。

「頑張ったんだねい」

「そりゃもう!」

 前はもっと大きくなるまで飛べなかったが、さすがに経験していると勝手が分かるから早かった。
 甲板を見下ろすと、俺が飛んだのを見上げているクルー達が、やんややんやと声を上げている。
 こうやって飛べるようになってまだ二日、見慣れない奇行だろうに、ただ喜んでくれる白ひげ海賊団はまるで本当の家族みたいだ。
 ばさり、と大きく音がして顔を上げると、いつの間にやらマルコが自由な両腕を炎の翼に変えて広げていた。
 離せよい、と言われて両手を離せば、自由になったマルコの足も炎に包まれ始める。

「ちゃんと飛べるか試してやるよい。ついてこれるかい?」

 にやりと笑ったマルコがどんどん不死鳥の姿になっていくのを見て、それを正面から見た俺も同じように笑った。

「あったりまえだろ!」

 俺の言葉を合図に、完全に不死鳥になったマルコが大きく羽ばたく。
 そうしてそのまま素早く飛び始めた火の鳥を追いかけて、俺とマルコの空飛ぶ鬼ごっこは始まったのだった。

 
 最後の最後で力尽きて海に落ちて助けてもらったが、マルコとサッチとオヤジにめちゃくちゃ怒られたことを、ここに記しておく。
 結構怖かったです。



end


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