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シャチと誕生日
※主人公はハートの海賊団クルーでシャチの恋人



「ナマエ、誕生日おめでとう!」

 可愛い恋人殿から笑顔と共にプレゼントを渡されて、ありがとうとそれを受け取った。
 本日は〇月◇日。
 なんと俺の誕生日を、浮上祝いついでに祝っていただいている真っ最中である。
 ベポ達や、船長からも祝われて、嬉しいやら恥ずかしいやらだ。
 酒が入って楽しそうにしている仲間達を見やった俺の横にシャチが座って、開けてみろよ、なんて言葉が寄越される。
 頷いて酒瓶を置いた俺は、リボンを解いて箱を開けた。

「……ん?」

 そうして、出てきたものを掴みだして目を瞬かせる。
 傍らへ視線を向けると、ニヤニヤと憎たらしいくらい楽しそうな顔をしている酔っ払いがいる。

「おいシャチ、なんでお前とお揃いの帽子なんだよ」

 思わず呟いた俺の手には、鯱を模した布地の柔らかい帽子があった。
 すぐ傍らにいるシャチの頭に乗っているものと、ほとんど同じ形だ。
 手先の器用なクルーが仲間たちの要望に合わせて作ったりしているその帽子は、まさしくシャチの名刺代わりである。
 うちの海賊団では、名前に動物の音が入っているクルー達は、大体似たような何かを持っている。
 別に恋人が『お揃い』にしたいというなら身に着けてもいいが、俺の名前までシャチだと思われるんじゃないだろうか。

「俺の名前じゃねェだろ」

 呆れながら紡いだ俺に、だって仕方ねえだろ、と酔っ払いが言葉を放った。

「名前を書いとくわけにもいかねェだろ?」

「いや、帽子に名前は今だってみんな入ってるだろ」

 何ならつなぎにも内側に名前の刺繍が入ったタグが付いているのだ。
 まるで幼稚園児のようだが、もはやつなぎや帽子が制服となっているのでありがたく目印にさせてもらっている。
 俺の言葉に、そうじゃなくて、と言い放ったシャチの指がこちらを向いた。
 人を指さすのに眉を寄せて手を降ろさせると、何が面白かったのかケラケラと笑い声が出てくる。

「シャチ?」

「だァから、お前に、名前書くわけにゃァいかねェだろ?」

 眉を寄せた俺に向けて寄越された言葉に、俺はぱちりと瞬きをした。
 その隙に俺の隣で酒を呷ったシャチが、気分よさそうにその手を伸ばしてきて、俺の手から贈り物を奪い取る。
 それをそのまま頭の上に乗せられて、無理やり『お揃い』にされてしまった。
 装飾されている分少し重たい気がするそれを頭に乗せたままで、つまり、と言葉を零す。

「マーキングかよ……」

 なんて誕生日プレゼントだ。
 喜んでいいものか、馬鹿なことを考えるなよと呆れたほうが良いのか、困った俺の横でシャチが笑う。
 それがあまりにも満足そうなものだから、とりあえず、明日から俺の帽子はこれになりそうだ、ということだけは理解した。
 結局のところ、俺は恋人に甘いのである。


end


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