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ヘルメッポと誕生日
※元気な先輩は何気にトリップ主
※中途半端に敬語メッポ




「ヘルメッポくんヘルメッポくん祝ってくれ!」

 通路の奥から素晴らしい姿勢で駆けてきた相手からの言葉に、のけ反るようにして足を止めたヘルメッポは目を瞬かせた。
 時刻は昼休憩の始まった頃、どことなく悲しそうな顔をした相手はヘルメッポよりいくつも年齢と階級が上の海兵で、思わず敬礼仕掛けたのを『それはいいから!』と遮られる。

「それより祝ってくれ!」

「え? ああはい、おめでとうございます……なんでまた」

「今日は俺の誕生日なんだ……!」

 乞われるがままに『祝福』を口にしてから訊ねたヘルメッポに、ナマエと言う名の海兵は拳を握ってそう訴えた。
 たんじょうび、の言葉が頭の中をくるりと回って、もう一度ぱちぱちと瞬きをしたヘルメッポの向かいで、今日初めて言われたぞとナマエが拳を握ったままで震えている。

「…………友達、いねェんですか?」

「傷付くこと言うなよ! いるから!」

 ただみんな記念日を気にしねえ奴らなんだ、と続いた言葉に、そうなんですかとヘルメッポは頷いた。
 それなら今のように『祝え』と特攻すればいいだけの話の気もするが、どうやらナマエにその気はないらしい。
 少し考えて、あの、と声を漏らしたヘルメッポがナマエを見上げる。

「さっきのはあれなんで。誕生日おめでとうございます、ナマエさん」

 祝福の言葉を言いなおすと、お前は本当に良い子だなァ、と感極まった様子で言葉を放ったナマエの手が、がしがしとヘルメッポの頭を撫でた。
 髪を乱され、よしよしと犬にでもやるような動きで撫でられて、いつもの笑い声がヘルメッポの口から漏れる。
 やがてヘルメッポを解放し、ナマエは手を降ろしてから『よし』と頷いた。

「今日、帰りの予定あけといてくれ」

「え?」

「ん? 何か予定入ってたか?」

 突拍子もない言葉にヘルメッポが目を瞬かせていると、ナマエが一つ首を横に傾げる。
 少しだけまた悲しそうになったナマエを見て、慌ててヘルメッポが首を横に振ると、それならよかった、とすぐさま弾んだ声が返された。

「おごってやるから、今日は飲みに行こうぜ」

 な! と念を押すように肩を叩かれて、ヘルメッポが思わず頷く。
 それに笑ったナマエは、それじゃ後で迎えに行くから、と一言を置いて、その場から先ほどのように駆けだしていった。
 向かった方向は食堂とは別の方向なので、きっと何かの仕事があるんだろう。もしかしたら、今ヘルメッポにやったように誰かへ自分の誕生日を主張しに行ったのかもしれない。
 嵐のようにやってきて嵐のように去って行った相手を見送り、ぱちりと瞬きをしてから自分の肩に手を当てたヘルメッポが、え、ともう一度声を漏らす。

「……昼って、外に出ていいんだっけか?」

 普段はずっと食堂を使っていたが、今日は食事より優先させるべきものがありそうだ。
 何を贈るのが一番いいのか、今日の夜にもう一度会うだろう相手の誕生日プレゼントを考えながら足を動かしたヘルメッポは、そのまま食堂ではないほうへ向かって歩いて行った。
 用意したプレゼントはとても安価なものだったが、手渡した先でナマエがとんでもなく感激してくれたので、用意した価値はあったのだろう。


end


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