春の陽射しのような残り香






土曜出勤てのはとても憂鬱。
なんで休みを返上して働かなきゃいけないんだ。
もし、もしも、午前中で終わればいいなって思うけど終わりそうもない。

昨日帰り際に上司に振られた仕事は膨大な量で、これを月曜のお昼までにと言われたら金曜日は残業確定。
昨日も23時過ぎまで残って今日も9時には来た。


休日出勤だからいつものオフィスカジュアルじゃなくて私の本来好きなファッションで、メイクで出社した。

桃色のプルパーカーに黒のサロペット。外ではニット帽を被ってきてて、髪の毛は・・・誰にも合わないかなって思ってツインテール。
働いてるくせにイタいとか言わないで。

多分いつもの私よりも実年齢に近く見られる、もしくはそれ以下か。
身長も大きくないから相まってエレベーターの鏡で見たらわたしはここにインターンで来てるのかっていうくらい。


でも、休日まで縛られたくないから清くこれできた。






仕事をし始めて3時間くらい、やっとひと段落着いたと思って、珈琲を買いに行こうと支度をしようとするとフロアの入口の方から物音がした。




「おつかれー」



『っ!?!?え、佐久間先輩?』



「佐久間だよー、碧唯が休日出勤って珍しいね」





誰にも会わないと思ってたからこの格好でいることを思い出したら途端に恥ずかしくなった。





「ふふーん、碧唯ってこういう服が好きなの?」




似合ってないって言われるんだ、年相応の格好しろって言われるんだ。





『えっと、、』




「似合ってるし、かわいいね!」



ってとびきりのスマイルの佐久間先輩。




『・・・引かないんですか?』



「引くわけないじゃーん、これからお昼?」



『珈琲だけ買いに行こうかなっておもって』



「ちゃんと食べなきゃダメだよ?偶然ね、佐久間さんはサンドウィッチを持ってるんだよねー。珈琲も持ってるんだよねー。・・・一緒にどう?」



『え、でもそれ佐久間先輩の』



「しかも何故か2つあるんだよね」



『ふふ(笑)』



「あ!笑ったなー!!!(笑)」






最初から私の分って言ってくれればいいのに佐久間先輩は絶対そんなこと言わなくてあくまでも偶然を装ってくれる。やさしいなって思う。





「昨日、あいつに仕事振られてたでしょ?」



『あいつって(笑)』



「あいつでいーの!碧唯さすがにヤバそうだし、手伝うって言おうと思ったんだけど昨日はあいつに捕まっちゃったし、今日こんな早く来てると思わなくてさ、ごめんね」


ってしょんぼり謝ってくれる佐久間先輩。
佐久間先輩は何も悪いわけじゃないのになぁ




『謝んないでくださいよ、こうやってお昼ご馳走になってますし』



「えーーーーこれ何も役に立ててないよ」



『たってますって(笑)私あとちょっと終わらせてから帰りますね』




「もうー頑張りすぎなんだって!」



佐久間先輩の、右手が頭上に上がって、
あ、これはポカってやられるやつかなって身構えて
咄嗟に目もぎゅっと瞑ってしまった。



でも一向にポカっていう衝撃はなくて
訪れたのは温もりだった。





「俺も手伝うからね」





『佐久間先輩、、、手、、』





「ふふふ、今日の碧唯本当に可愛くてさ、我慢できなかった!もし、碧唯が良かったらさ、このあとちょっと出かけない?」





『で、出かけるとは・・・』





「んー、デート?碧唯が行きたいところでもいいし、俺が決めてもいいけど、息抜きしよーよ!・・・あと、可愛い碧唯、、独り占めしたい、」












恥ずかしくてなにもいえなかったけど、大きく頷いた。


また、頭をポンとしてくれるんだ。











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