ロイエレ
恋をする、とは苦しむ、と言うことだ。
だれかどこかの偉い人のお言葉みたい。昔、ロイドの部屋にあった本に書かれていた気がする。その本自体は難しくて何の内容だったかは忘れてしまった。けれど、恋をするとは苦しむと言うことだ、の名言は頭に残った。
「エレナの髪、少し伸びたね。」
「うん。そろそろ切りたいんだけど時間がなくてね―‥」
ため息をついて橋の壁に持たれたら、ねぇ、伸ばしてみなよ、とラルゴが首の辺りのあたしの髪に触れながら言ってきた。
髪の毛に感覚神経なんて無いはずなのにそこからしびれる気がした。しびれて、心臓に伝わって、爆発してしまいそうな。
ただの幼馴染みの彼に触れられているだけなのに。
「伸ばしたら、手入れが大変でしょう?BEEには髪を手入れする時間は無いのよ」
取り繕うのに精一杯だった。
ぷい、とそっぽを向いた。それでも彼はあたしの髪を触り続けている。
触れられている。それがなんだかわかってしまう。ぞわぞわ、しびれるて心臓を痛めるから。
橋の上から水面を見るように彼に背を向けたけど、姿は水面の水面に鏡のように映っていた。
顔が赤くなりそうなあたしを他所に彼はいつもとかわらない。かわらず、よくやる苦い笑みを浮かべている。
苦笑している彼に何よ、と言ったらいや、なんでも無いよ、と軽く笑われた。それにまた心臓が痛んだ。
恋をする、とは苦しむ、という事だ。
どこかの偉い人の名言。
だとしたらあたしのこれは苦しいに入るのだろうか。
少しだけ意地になってしまうこれは苦しいと言えるのだろうか。
これを恋、と呼んでいいのだろうか。
わからなくって、橋の手すりを握る手に力を込めた。
彼はまだあたしの髪に触れ続けている。
恋じゃないの、多分
だって、苦しいだけじゃなくて、どこか彼の手が心地いいから。
日の微リメイク
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