main | ナノ



モク(→) +アリ






※11巻ネタ
 馬車内の話?





「副館長……!?」




たまたま見かけたから声を掛けた。ただ、それだけだった。然して意味もなく。
何か感情があったのならば、格好に驚いただけだ。
ただ、それだけだ。



全く人の話を聞かず馬車に乗り込んでシャーク岬に向かおうとするからとりあえず最後の配達だけはさせてください!そう叫んだ。
馬車の中では俺の得た情報を聞き出す。ちゃっかりしている。
そんなにあいつが大事なんですか。ギリリ、胸が痛む気がした。
馬車の料金は割り勘にしますからね、と言ったら、あれ、モックの奢りじゃないの?キョトンとした顔で返される。
それに青筋を浮かべそうになったけれど、今回だけですからね、とため息を吐く。



「ありがとう、モック」



そう言って微笑を浮かべたアリアさんに胸が高鳴ったのは気のせいだ。
どのみち、アリアさんの思いはとある2人の男に向いている。幼馴染みの安否と、元館長の安否。
俺はそれを知るに都合の良い手駒に過ぎない。そしてアリアさん、と近しい名前を呼ぶ資格すら無いような立場だ。恐らく。
だからアリアさんを呼び止めたのは何も意味は無い。きっと。
もしかしたらあの凸凹道ですっ転びやしないか、なんて思ったかもしれないけれど、本当に呼び止めたのは驚いた、ただそれだけだ。むしろ気が付いたら呼び止めていた。そんな気がする。
とりあえず窓際課長に貸しを作る羽目になるなんてね、と毒づいた。


そうだ、元副館長か窓際課長と呼ぶのがベストだ。
アリアさん、なんて近しく、馴れ馴れしく読んでしまっていたら要らぬ気持ちを抱く。
そう言い聞かせた。



ありえもしない願い
(それは無自覚でいたい恋心か)
(人付き合いが面倒なだけか)




















.

[ 108/116 ]
/soelil/novel/1/?ParentDataID=1


 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -