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ジギ+アリ



いつものいつも彼女は出迎えてくれる。何時に帰ろうとも、おかえりなさい、て言って。
ふっ、と微笑む彼女とは必要最小限しか話さないけれど。
それでも気遣っていてくれているのが伝わってくる。きっと、純白な心の持ち主なんだと思う。だからか、彼女の迎えは心安らぐ。今日の久々なハチノスへの帰還も、そんな一日だった。


「お疲れ様、ジギー」
「あぁ」
「次の速達に行く前に館長室で珈琲を飲んでいく?」
「いや、いい。珈琲だけもらいたい」
「わかったわ」

コツコツ、と靴をならして広間から去る姿に一体、いつ自宅に帰ってるんだろうと思った。
室内だから、と脱いだ帽子をきゅ、と握りしめ柱にめもれかかる。見上げた天井は高いだけで先が見えない。ふぅ、と溜め息をついて休息する。
珈琲なんて出さずに次の仕事に向かわせてもいいのに、そうしない副館長の気遣いがありがたかった。


「はい、ジギー。珈琲よ」
「ありがとう」


芳しい香りが立ち上るコップを受けとり啜ると目が覚める。
やはりコーヒーは魔法の飲み物だ。温かいのに一発でこんなに頭が冴え渡る。目の前でひっそりと、見ている副館長に凄く頭がスッキリした、と礼を再び述べてカップを返した。


「一息ついて直ぐで悪いのだけど、ジギー‥」
「仕事の話か?」
「ええ。とても早く届けないといけない速達があるの。これなんだけど‥」


差し出された一通の手紙。
規定サイズより一回り大きいそれは分厚かった。住所に見覚えがある。それをかいた字すら見覚えがある。








「宛先はジギーペッパー。差出人はネリ。」















ぽつりと呟くように言われた副館長の言葉に目を剥いた。
にっこりほほえんだ副館長は、ジギー、そう言うわけだからはやくそこの住所に届けてね、そう言って、分厚いきっと館長のスケジュールが詰め込まれた手帳を片手に奥えと消えていった。






気遣いの魔術師かと思った
(これでは、いくらなんでも帰って休まざるを得ない)


















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