main | ナノ



マナ→ゴシュ→アリ



知っていた。わかってた。貴方の事を見ていたから。だけど面と向かって言われたらやっぱり悲しかったんです。心は苦しくて、どうしたらいいかわからなくなる。



(僕が助けないと。)
(アリアは、運動神経ゼロなんです。だから。)



ハーブティーを口に含んだまま彼を見上げると、カップを置いて柔らかく微笑んで私の言葉を待っている。
銀髪のアルビス種の彼は普段は優しくて、親切で、でも頼りなさげでヘタレぽそう。だけど、彼女の事を話すときは優しくて、親切で、格好よくなるんです。


(──男の顔になる、と言ったところでしょうか)


今、まさにそうで。
私の仄かな気持ちに全く気付く余地がないくらい彼女を守れることが誇らしいみたいで。心は苦しくて、堪らなくなった。だんだん視界がぼやける。


「…マナ?」


ぼやけた視界から溢れだし、頬を冷たいものが伝う。止めよう、と思ってもそれは止まらず、せめて声は出さないようにしなきゃ、と口をへの字に結んだ。研究に戻ります、って逃げ出すようにこの場を後にすればいいのに体は固まって動かなくて。



「どうしたんですか?マナ‥」


どこか痛いところでも?と、優しく私の頭に手を当てて聞く彼は優しい。向かいのテーブル越しに屈んで本当にどうしたんですか?と聞く彼に貴方のせいです、とはとても言えない。優しい彼はきっと困ってしまうから。
甘えられない優しさは苦く、苦しい。それに私の恋心を知らない彼は気付く余地もない。ジレンマが余計に胸を苦しめる。
再度、大丈夫ですか?と理由を問う彼に貴方のせいです、とはいえなく涙を押さえるのに精一杯だった。彼女の事になればあんなにかっこいい顔を見せるのに、私の前では困ったようにしか笑わなくなってしまう、それは嫌だったから。













.

[ 99/116 ]
/soelil/novel/1/?ParentDataID=1


 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -