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アリアとシルベット


「嘘よ、アリアさん嘘ばっかり!!」



「ごめんなさい、シルベット」

「うそよ!!うそよ…‥」



泣きわめいてお兄ちゃんがクビになったことと行方知らずになったことを否定した。いつも兄ちゃんと私と一緒にいてくれたアリアさん。優しいアリアさん。アリアさんが嘘付かないのはよく知ってる。だけど嘘だと叫んだ。
だって今までどんな約束も守ってくれたお兄ちゃん。必ず家に帰ってきてくれてたお兄ちゃん。私の作るご飯を美味しいといってくれたお兄ちゃん。私の足を治せるようにお金を貯めてたお兄ちゃん。ずっと私のことを忘れまいとしてくれた、お兄ちゃん。
今まで、お兄ちゃんは約束を守ってくれてた。
そのお兄ちゃんが、約束を忘れる筈がない。ヘットビーになって帰ってくるっ、って、宣言して、約束したんだもの。
私がお兄ちゃんがアカツキに行くのを許したのは帰ってくるって信じたから、なのに。



そんなはずないって、泣いた。



そんな私を、アリアさんは抱き締めた。
伝わる温もりはお兄ちゃんと変わらない。優しい、温もり。
泣きわめく私と違って落ち着いてるアリアさんも涙を流してた。
ないて、泣いて、泣き疲れて、私の記憶は無い。多分、寝ちゃった。
気が付いたときには優しいバイオリンが流れてた。眠った私の傍らでアリアさんが奏でてた。
優しく、悲しい調べのノクターンを。
この時、やっとアリアさんも辛いのに気付いた自分を馬鹿だと思った。
嘘だとわめいてごめんなさい、と言えずにアリアさんと約束を交わした。



『いつか帰ってくるよね』
『そうね、信じるわ』
『だから、頑張りましょう』


最後に奏でたノクターン
あれ以来アリアさんはノクターンを奏でない。
それはきっと、お兄ちゃんへの鎮魂歌だから。






























参考会話
六巻 少女人形より

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