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たぶん好きなんだと思う。


彼女への感情を聞かれたらこう答えるだろう。
だけど恋人として?と聞かれたらあやふだ。僕らはお互い、幼馴染みに恋をした。そして幼馴染みを失って、心をぽっかりと失ったんだ。ぽっかり。
だからどんな気持ちでいるか察しはつくし、そんな気持ちを含めて好きって言えるんだ。
似てるから、わかるから、好きって言えるんだ。
だけど、恋人として?と聞かれたらあやふや。
だって、どこかで幼馴染みを恋しく思っているんだ、彼女も僕も。一番好きなのは誰?と聞かれたらわからなくなっちゃうんだ。
だから恋人?といわれたらわからない、そんな僕ら。
椅子に座って書類を整理する彼女を見て、再度どうなんだろう、と思って立ち上がった。


「どうされたんですかって、館長!」
「んー?」
「勤務時間中に抱きつくのは止してください!!」
「いいじゃないか、別に」
「よくありません!!!」


「いいじゃないか、愛せる人がいるんだから」


耳元でふわり、囁いたら彼女は抵抗をやめた。軽く抱き締める強さを強くすると、そうですね、と小さく綺麗な声が響いた。


「ねぇ。」
「何ですか?」


「僕ら、付き合ってるよね?」

「そうじゃないなら私は館長からのセクハラを受けていると申請しますよ」


拗ねたように言う彼女が可愛くて、野暮な事を考えたなぁ、思った。


ごめんね、と言って、ひとつのキス。






正しくない僕ら
恋人だけどたぶんどこかで別の人に恋してる。
だけど愛してるのは、君なんだ、きっと。












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