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「ずっと、じゃなくていいの」
「一瞬でいいから。あなたを頂戴。」


本当に一瞬。触れるだけのキスでいい。
私を見て。私だけをうつして。



「私を抱きしめて」


対峙していた黒い彼に請いた。
私が自宅に帰る道すがら、時々彼が姿を表す。何をするでもなく、一メートルくらい離れてお互いに突っ立ってる。
初めてあったときは彼にチップ花の綿毛を突きつけられた。思わず受け取ったそれは自宅で小瓶に入れて保存してしまった。
それ以来、彼は私の帰路に時々姿を現した。でも、それだけ。
直ぐに闇に紛れ行く。
だから思わず口から出のは"抱きしめて"だった。おかしいね。敵、なのに。
だけど。



ふわり。
黒いマントが私を包む。暗闇で感じたのは久しい彼の臭い。



ぶわり。
瞬く間にそれは離れて温もりだけを残した。
彼は私の願いを叶えてくれた。





「今度会う時は敵だから」
「一瞬を」


ありがとう、とは塞がれて言えなかった。
それは触れるだけで瞬く間に離れ行く。




『ありがとう』




最後の台詞を奪った彼は私の唇も奪っていった。
そして、今日も闇に紛れ行く。
ねぇ。今度、また、私の願いを叶えに現れてくれる?






もう永遠は諦めたの。
(だから、一瞬の温もりをもう一度。)















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ノワアリは密会してたらいいよ、な発想から。

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