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※ユウサリでは夕焼けが微妙にある設定になってしまいました
※10巻会話ネタバレ有りです
ご了承頂ける方のみ、どうぞ
榛色に空が染まる。
夕焼けを見るとあなたが夕飯を食べに来なくなったのを思い出す。
「あ あのね、ゴーシュ…‥今日私の家に食事に来ない…‥?ちょっと…色々…つくりすぎちゃって…‥」
「ありがとう。帰ってくるのが遅くならなかったらシルベットとお邪魔します」
夕刻、ほんの少し人工太陽の色が変化して、見える世界が橙色や榛色に色付く頃の会話。
彼の顔も同じで、赤みがさしたようにみえてそれが私と同じ照れゆえなのか、人工太陽のせいなのかわからなかった。そんな彼はほんの少し口角をあげてはにかみながらこたえてくれていた。
そうやって、一緒に夕食を食べたり食べなかったり。
笑顔が転がる暖かい空間に私は浸っていたかった。
だけどいつからか彼はそれを断るようになった。
「ありがとう。それなら……シルベットに声をかけてやってくれるかい?」
「えっ‥」
夕刻より遅い時間に声をかけるといつもと変わらないほんの少し口角をあげた笑みを称えてそう答えた。頬には赤みなんて見受けられやしなかった。
「僕なら大丈夫」
「アリアは優しいな」
「ありがとう、いってきます」
くるり、と前を向いて彼はヨダカ地方へ歩みを進めはじめる。
優しい瞳はどこか伽藍堂に。
見つめるのはシルベットの幸せのみになっていて。
廃れた自分を休むまもなく働いて働いて、倒れるんじゃないかって思えた。
心配しつつ、帰還したばかりの彼がまた配達に行くのを見ていた。
(アリアは優しいな。)
優しくなんてない。
私はあなたとシルベットの笑顔がみたくて夕食に誘ってる、凄く我儘な女よ。
作りすぎた、なんて嘘をつく女。
私が優しいならあなたがシルベットに向けるそれは優しさ以上の愛情でないの?
切なくなって、彼の後ろ姿をずっと見詰めてた。
それは紺碧と橙が混じった夕日がユウサリを照らした日の事。
冷えた夕焼け
泣いてなんか、いられない。
だけど、あのときと同じ夕焼けを見たら少しだけ、感傷に浸ってもいい?
補足
アリアさんの記憶でゴーシュを夕食に誘ったときのネタ。
以前は夕食に来てくれていた→誘っても仕事重視の
ゴーシュに変化。そんな話。
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