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「ア、アラン」
 公司たちの気配が遠くへ消えた頃、ヴォルトが駆け寄ってきた。
「助かったぜ……あぁ、ひやひやした。もしばれたら、俺は絶対粗大ゴミ行きだ」
 ヴォルトは「ありがとな」と言い、ぼくの肩を軽く叩く。
 ぼくは頭を下げたまま、首を横に振った。
「しかし……俺ら、こんなもん体の中に入れてたのかよ……。俺らを造った奴は、完全に頭がイカれてる。なぁ?」
 ヴォルトが壁にあいた大穴を見ている。ぼくは、また首を横に振る。
 不自然なぼくの様子に、ヴォルトは気づいたようだ。
「……どうした? おい、アラン」
 ヴォルトが覗きこんでくる。ヴォルトの茶色の瞳が一瞬、かすれた。
 気づいたら、ぼくは床に突っ伏して倒れていた。
「アラン!」
 ティーマとヴォルトが、同時にぼくを呼ぶ。
 体を起こされたが、ぼくは天井だか床だか認識できないまま、口元を歪ませた。
「ヴォルト……ぼく、ゼルダを消したよ……」
 ぼくの口から、情けない声が漏れた。
 ヴォルトは心配そうにぼくを覗き込み、ぼくを揺さぶる。
 目の前が揺れる……物が二重に見えて、気持ちが悪い。
「あ、あぁ! そうさ! お前、やったんだ!」
 ヴォルトの必死の声が、ぼくの頭の中で騒いでいる。
 ティーマの真ん丸の瞳が、正面からぼくを覗き込んできた。
「ぼく……ゼルダを消しちゃったよ。ティーマ……」
 ティーマの瞳が、霞む。
「ゼルダ、消えちゃった。ゼ、ルダ、落っこちた」
 ティーマの寂しそうな声が、聞こえる。
 唇が、どんどん固まっていく。体が、もう言うことをきかない。
「ヴォルト……ねぇ、ヴォルト。もう一度、ぼくみたいにゼルダを造り直してあげてよ――……お願いだ。ぼくの体、どこを使ってもいいから……」
 ぼくの声にならないような声は、ヴォルトに届いたのだろうか。
 ヴォルトがぼくを支えながら、しっかりと頷いた。ちゃんと、伝わった。
「安心しな、俺を誰だと思ってんだ。ゼルダも、お前と同じように造り直してやるさ」
「本当に? 信じ……るよ……」
「あぁ、造ってやるよ……――あのクソオヤジのデータなんか、ぜんぶ消去してよ」
 ヴォルトはそう言って、そっとぼくの終了スイッチを押した。



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