朝早く起きるのは決まって弟である佐介、つまりボクの方だ。 とにかく兄の佑助は起きるのが遅い、というかボクが起こさないと起きてくれない。 なぜなら兄に対する『起こし方』はボク以外がやっても意味がなく、ボク以外がやることをボクも兄も許さないからだ。 ボクでないと意味がない。 兄弟で…こいびと、であるボクでないと。 Jeder Tag 気をつけていても音が立ってしまう家の階段をゆっくりと上る。 2階の部屋割りは一番奥の部屋が兄の部屋、その1つ手前にボクの部屋となっているので今は兄の部屋に向かうべきだが奥まで行かずにボクは自分の部屋の扉を開く。 そこには未だ気持ち良さそうな寝息を立てている兄がいた。 これは、当たり前。 ボクが起きるまでボクの部屋にある小さなシングルベッドで一緒に寝ていたのだから。 そしてボクは兄を起こす為に他の人に譲れない『起こし方』をする。 これが冒頭で話していたもの。 誰かにこんなことをしているとバレた日にはきっと羞恥で死ねるだろう。 「佑助。起きて。朝。」 耳元へ出来る限り口を近付け、兄のお気に入りだという声で2人きりのときにしか使わない下の名前呼びをして起床を促す。 そして優しくキスをするのだ。 するとすぐに兄は目を覚まし、ほにゃり柔らかく嬉しそうにボクに微笑んで決まってこう言う。 「おはよう、佐介。」 この瞬間が堪らなく好きで、毎朝恥ずかしいながらもあんな起こし方をする様になった。 しかもこの起こし方を1度して以来、他の起こし方だと布団を剥いでみても揺すってみても兄は目をなかなか覚まさなくなってしまったのだから呆れたものだ。 そんなことを考えているといつの間にかベッドを抜け出していた兄に 「佐介、下行かないのか?」 と後ろから抱き着かれながら聞かれた。 「勿論下りる。 早く行かないとせっかくの朝食が冷めるからな」 ボクの背中からお腹に回った兄の手を握り返し、少し首を傾けると短く切り揃えてある前髪から覗く額(これまた兄のお気に入りらしい)にされる小さなキスを甘受する。 その後、出張で居ない母と幼い頃に他界してしまった父を除く2人で慌ただしく食事を済ませ、学校へ向かう。 もちろん学校へ行けばクラスが違うので別れることになるが、別れるといっても隣なのでどちらかのクラスの前に来るまではずっと一緒だ。 よく友達には 「そんなにべったりで気持ち悪くねーの?」 と言われるが全くそんなことはない。 むしろ幸せを感じる。 だって自分の好きな人で自分を好きでいてくれる人とほとんど離れる事なく過ごせるんだから。 こんなボクは、 世界一の幸せ者だと思う。 Jeder Tag=(独)毎日 |