*俳優ぱろ
*そして仲良し



『もしもし、臨也か?今日もお疲れ。』

『あ、シズちゃん!そっちこそお疲れ様!』

『確か今日はもう上がりだよな?だったら俺の家で夕飯でもどうかと思ってさ。昨日美味いワインが手に入ったんだ。』

『ほんと?なら着替えた後、お邪魔することにしようかな。』

『了解。じゃあ後でな。急がなくて大丈夫だから。』

電話を切り、なんだかんだで気に入っている使い勝手がいいんだか悪いんだか微妙な、最近流行のタッチパネル式携帯をポケットにしまう。
携帯から聞こえていた声の主は、今俺がお世話になっている芸能プロダクションに入ったときからの長い付き合いになる、俺と同じく俳優を生業とする男だ。
最初こそ些細なことでよくぶつかり合いマネージャーを困らせたものだったが、今となっては悪友と言うのが一番相応しいくらいのいい仲である。

そんな俺たちは最近になって知名度が上がりつつあり、出演するドラマを始めとした番組の収録や雑誌用にインタビュー込みの撮影なども段々と増えてきた。
確かに喜ばしいことではあるのだけれど、これまでのように前もって約束を取り付けていたとしても予定通りに会えるのは片手で足りる数ほど。
自分でも気付かないうちに、二人でいることに慣れきってしまっていた俺としてはこんな現状が無性に寂しく思えて、最終的に、ひとつの結論に辿り着いた。

俺は相当前からシズちゃんに対して友情を超えた感情を抱いているらしい、と。

学生時代を振り返ってみてもシズちゃんと同じくらい気兼ねなく話せる友人はいなかったし、喧嘩をして厭味を言い合えるような砕けた付き合いをした人もいなかった。
だからこそこれほどまで近しい人間となったシズちゃんはかなりのイレギュラーで、ましてや恋愛感情を抱くことになるとは。

そりゃシズちゃんは格好いい。
俺より身長は高いし、肩幅も広く、日本人には珍しいレディーファースト精神の持ち主で、基本的に女性や子供に優しい。
けれど、それ以上に彼の魅力を引き立たせるのは、あの甘いマスクだ。
日本人にしては彫りの深い顔立ちに奥二重の瞳。
チャラく見えるはずの金髪が良く似合う、シャープな輪郭。
間違いなく皆が皆口をそろえて「男前だ」と言うだろう。


「まったく、俺もそこらの女子のこと馬鹿にできないなぁ…」

ぽつりと呟いて、マネージャーの用意した車に乗り込む。
先程終わったばかりの雑誌特集ページ撮影は開始時間こそ多少の遅れがあったもののカメラマンやアシスタントの頑張りのおかげでほぼ予定通りの時間に終わった。
この後特に用事があったわけでもないけれど、どことなくいい気分で更衣室へ向かっていた最中に先程のシズちゃんからの突然のお誘い。
今日はとことん嬉しいことが続く。

シズちゃんの家へ向かうこと伝え、窓ガラス越しに流れてゆく景色を眺めていると隣に座って明日からの予定を確認していたマネージャーが話しかけてきた。

「貴方達が最初に顔合わせしたときのことを思い出すとここまで仲良くなるなんて微塵も思えなかったのに、不思議なものね。」

「俺自身だって不思議でしょうがないよ。」

「そう。まぁ、これからも仲良くしてなさいね。そうすれば互いに切磋琢磨し合って仕事にもいい影響が出るわ。」

「シズちゃんのことは関係なしに仕事は自分で増やしてみせるさ。」

「あら、凄い自信ね。」

何故か常に偉そうなこのマネージャーは俺が今最も苦手とする人間だ。
シズちゃんへ抱くこの想いに誰よりも早く気づき、それをネタに俺をからかい遊ぶ。
ムカつく忍び笑いを続ける彼女を放ったまま、俺にとって嫌な雰囲気を切り替えるべく運転手に話しかける。

「もういいだろ、その話は!…運転手さん、そろそろだよね。」

「はい。着きますよ。」

会話に気をとられている間にどうやらマンションの駐車場付近まで来ていたようで、それから5分と経たずにエントランスへ到着した。
一応明日の予定を確認するため携帯へ予定表を送ってくれるようマネージャーへ頼み、最後に運転手にも礼を伝え車を降りる。
小さな声で彼女が何かを言っていた気がしたけれど、それはドアを閉める音と重なって最後まで俺の耳に届くことはなかった。


何度も来ているシズちゃんの家は高層マンションの19階。
解除し慣れたオートロックを通過してエレベーターに乗り込むと、音も立てずに上昇していく。
数秒したところでエレベーターの絶妙な浮遊感が無くなり、到着のベルが鳴る。

フロアーの一番奥。
部屋番号を確認してインターホンを押すとすぐさま慌てたようなシズちゃんの声が聞こえてきた。

「臨也か!ちょ、ちょっと待っててくれ!」

「あは!なに急いでんの。」

めったに聞かないその声に思わず漏れる笑いを隠さず声にした瞬間。
凄い音と共に開いた玄関扉の向こうから大きな赤い薔薇の花束と、顔を薔薇に負けないくらい真っ赤にしたシズちゃんが飛び出してきた。

「え 、」

「誕生日おめでとう!」



もうすぐ




「お前忘れてるみたいだったから…」

「でも…なんで、知って 、」

「っ、好き、な、奴の誕生日くらい、知ってるに決まって、んだろ!」

「! し、ずちゃ…!」

「言わせんな!くそっ!」






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目眩企画様へ提出させていただきました。



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