私の手を握る栄口
の手は暖かかった


「話してくれないなら、
今の俺にはこれくらいし
かできないな」


栄口が目の前に来た
のが分かった瞬間
暖かいものに包み
込まれた。溢れる涙
を止めることなく顔
を上げると、栄口が
私を抱きしめていた

人の気も知らないで
そう言いそうになる
のを押し殺した。
栄口の暖かい優しさ
が今は辛い
涙が頬を伝って栄口
のシャツを濡らした


「ごめん、ありがとう栄口」


しばらく栄口の胸を
借りて泣いた後この
ままじゃだめだと離
れ、顔を見ることなく
俯き目を強く閉じた

もうやめよう好きで
いるの。私が辛いだけ
それに、栄口に心配か
けてしまう。

抱きしめられていた時
は凄く幸せだった
期待してしまうとこ
ろだった。でも彼は私
を友達としてしか見て
いない。だって栄口は
あの子が好きなんだ
私は応援しなくちゃね
だって、友達だもんね


「勇人」
「!」


私が始めて呼んだ
最初で最後の栄口
の名前
泣き笑った私を見て
栄口は目を見開いた


「栄口が友達でよかった」
「・・・そっか、」


一瞬悲しい表情を
した何故だか分か
らないけれど。私
は涙を拭いて栄口
に背を向けて歩き出す


「俺、ずっとそばにいるよ」
「!」
「お前をそんな顔させない」


その言葉に屋上の扉に
手をかけていたのをやめ
振り返る。今、そんな顔
させているのは貴方だよ
そっと心の中で囁いた
涙が出そうになるのを
必死に抑え。期待するか
らそんなこと言わないで
と何度も思った


「・・・好きなんだ。」


栄口が言った言葉は
私には聞こえていな
かった。屋上を出た
私は階段を一段降り
そこでうずくまった


「ゆう、と」


誰もいない階段で
独り声を殺して泣いた
最後に貴方の名前を囁く



期待させないで


20110409.

title:確かに恋だった

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