現文の授業中
先生が教科書を延々と読むのを聞き流して
ふと、ノートの真っ白いページに好きと小さく書いてみた
こっそりと斜め前に座っている
栄口の後ろ姿を見つめる
「・・・」
もう一度さっき書いた
好きの文字を見ると、ぼっと
顔が熱くなるのが分かった
先生に見つからないように
そっとノートを切り放して
紙飛行機を折る
ノートで折った紙飛行機は
完璧ではなくていびつだけれど、
栄口のところまでなら飛んでくれるよね?
と彼の背中目掛けて紙飛行機を飛ばすと見事にあたる
「お 前 の?」
「・・・う ん」
栄口が紙飛行機に気づいて拾い上げて
私の方に振り返ると小さな声で聞いてきた
そして、その紙飛行機をそっと広げて
私が書いた2文字を見つめると、
手に持っていたシャーペンで
何かを書いて私に飛ばしてきた
俺も好き
それを見て栄口を見ると
ほんのり頬を染めて笑った
紙飛行機
(初めて聞こえたんだ)
(耳たぶの染まる音)
20100815.