夢のはなしでは




朝の光を浴びて、目を閉じて伸び
をする。今日見た夢がぼんやりと
浮かんできたけどハッキリとは思
い出せなかった。うーんと考え込
んでいると誰かに背中を叩かれ噎
せる。


「おはよー!わり、叩きすぎたな」
「おはよ、田島。大丈夫だよ」
「んじゃ、朝練あるから先に行くな!」
「頑張ってね」


おう!と言った田島の声が響き渡った。
自転車をこぐ姿を見送ると、空をみあげ
て歩く。つんとした短い髪が視界に入る。
先に行ったはずの田島がUターンしてきた
みたいだ。


「やっぱ、置いていけないから戻ってきた!」
「え、え?」
「乗って!」


わけ分からないまま、私は田島の自転車
に乗せられ気づいたら立ち乗りしていた
。朝の爽やかな風が気持ちいい。


「どうして…」
「なにが?」
「どうしてUターンして来たの?」
「なんとなく。お前を置いて行っちゃいけない気がした。」
「そっか。何か田島らしいねー」


そうかー?と笑う田島にそうなの!
と捕まっている肩に力をこめた。


「そうだ、今度の試合勝ったらさちゅー」
「ダ・メ!」
「んだよー。まだなんも言ってないじゃん!」
「ちゅーして!でしょ?」
「そう!それがダメならちゅーする!」


何でそうなるの…と田島にはため息が出る。
ん?アレなんだろう?この場面何だか知って
いるような…


「確か私はいいよとか言ったような…」
「え?!いいの!?やったー、チョー嬉しい」
「ええ?ちょっと田島ち、違うっ」
「んじゃ、約束なー!」


田島は嬉しそうにはにかんで、朝練に
向かった。結局、ちゅーをダメなんて
言えないまま試合当日になった。試合
結果がどうなるかなんて私は知らない
。でも絶対勝ってほしいと思っている。



夢のはなしでは


(ちゅーしたんだよね…)

20110919.




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