おお振り(短編) | ナノ








ふと、今日は温かいから外に
出て近くのグラウンドまで来て
みた。グラウンドの手前にある
土手に腰を下ろして、小学生の
野球チームの練習試合をぼーっ
と眺める。

私より遥かに小さい身体なのに
あんなに飛んで滑って。やっぱ
り野球って魅力的だなと実感し
た。そんな小学生たちを見てい
たら小さい頃の文貴を思い出す。


『俺だってまだまだへたっぴだけ
ど野球好きな気持ちは誰にも負けないよー!』


そう言って目の前にいる子たち
みたいにボールに向かっていっ
てたっけ。あの頃の文貴は一生
懸命ですっごく可愛かった、な
んて思うと笑えてくる。


「んじゃ、今はどうなのー?」
「んえ!!?ふ、みき!!なんで?」
「たまたま通りかかって近づいたら
声漏れてたから」


ああ、それはなんて恥ずかしいこと
を・・・。そっと口元に手を当てる
と文貴は小さい子のように無邪気に
笑う。その笑顔を見てもうひとつ
思い出す。


『大きくなってゼッタイお前を
こうしえんに連れてくからね!』


「なにニヤけてんの?」
「なんでもない。文貴、甲子園連れてってね。」
「あたりまえだろー。お前しか連
れてくヤツいないんだからな!」


文貴の肩に寄り掛かり顔を見上げる
とボっと音がでそうなくらい真っ赤
になった顔に私は我慢できなくて涙
が出るくらい笑った。



もうすぐ春ですよー


(上手くなって甲子園で)
(カッコイイところ見せる!)

20120322.







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