『お疲れっしたー!』
薄暗くなったグラウンドに皆の 声が響いた。向こうで皆はあち ーとか腹へったーと騒いでる。 最近の練習は前より更に厳しく なり、部室に入る前に眠くなっ てへたり込む人続出。
「もう、俺だめ・・・」 「あ、ほら水谷くん起きて」 「5分でいいから寝かせてー」 「だめだよ、風邪ひいちゃう」
水谷くんを起こそうとすると、 今度は三橋くんがベンチで寝て いるのが見えて思わずため息が 出そうになる。とりあえず、水 谷くんだけでも運ぼうと思って 腕をつかむと田島くんがイカを 両手に持って現れた。
「あ、田島くん」 「おーら!水谷食えっ」 「ふごっ!」 「目覚ましだよ。俺ん家特製だぞ!それ食いながら帰れよ」 「いはいよ、ふぁじまあ!でもあひがふぉう」
イカを無理矢理口に突っ込まれた 水谷くんを見て痛そう口を押えて いると田島くんが私の方に振り向 いて笑う。私もイカを突っ込まれ ると思い身構える。
「なんだよ、お前には突っ込まねえよ」 「な、なんだ。」 「あとで三橋も起こしに行かねーとな」
私も口に突っ込まれると思っていた のが面白かったのかずっとにこにこ していた。
「田島くん、先に三橋くんを起こしてあげた方がいいよ」 「その前に!お前にもイカやる」 「ありがとう・・・ってくれるんじゃないの?」
田島くんは確かにイカをくれると言っ て差し出してくれたけど受け取ろうと するとぎゅっと掴んだままでイカを離 してくれない。
「あーん」 「あーん・・・ってちょっと!」 「なんだよー、いいとこだったのにー食えよ」
途中まで乗ってしまった私も悪いが、 あーんをさせる田島くんも悪い!なん て恥ずかしいことをさせるんだと頬を 押えていると田島くんがにやにやしな がら私の顔を覗き込んできた。
「にひひ、どきどきした?」 「な、に言ってんのばか!」 「そっか!んじゃ三橋起こしに行ってくる」
満足そうに三橋くんを起こしに行く田島 くんに私は確かにどきどきしたのは言う までもない。本当に何考えているんだか
どきどき
(アイツをどきどき) (させたら俺の勝ち!)
20080706. 加筆20120207.
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