おお振り(短編) | ナノ








野球部のマネジをやっている
私は今日もマネジの仕事で、
片付けをしていたら遅くなって
しまった。

部室から出るともう外は真っ暗
で部員のみんな先に帰ってしま
ったらしい。
少しくらい待っててくれてもいい
のになあ、なんて友達に愚痴をこ
ぼしてしまおうかと思ってしまう。

カバンを持ち直して部室に鍵をかけて
職員室へ向かおうとすると、にょきっ
と三橋くんの頭が見えた。


「うわああぁ、」


私が肩を叩くと三橋くんはもの凄く
驚かせてしまったみたいで、叫んだ。


「ごめんね、驚かせて」


すると三橋くんは力が抜けて、ふひ!
といつものように笑い、大丈夫と言う。


「三橋くん、ここで何してたの?」
「待って、た!」
「みんな帰っちゃったみたいだけど・・・?」


待ってたって誰だろうと辺りを見回す
とやっぱり私と三橋くんしかいない。


「え、と・・・きみを、待ってた!」
「そうなの?ありがとう」
「ふ、ひ!」


なんで待っててくれたのかを
あとから聞いてみると、私と
帰る方向が一緒なのは三橋く
んだけだからと、部員のみんな
が三橋くんに送ってやれと言わ
れたらしい。


「あ、の。家まで送らなくてヘーキ?」
「うん、ここまでくればもう近いから」
「そ、そっか!」
「送ってもらっちゃってごめんね」


そう謝ると、さっきはみんなに言われた
みたいな言い方したけど、俺も送りたかった
から。といつものようにもっともじもじして
いたけど、男らしい一面もあって三橋くんは
優しい子なんだと改めて思った。



優しさ


(今度、は堂々と一緒に、帰ろう)
(と誘えるといいな)

20080816.
加筆20120111.







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