おお振り(短編) | ナノ







今日で、ひとつ年を重ねた
なんて実感がイマイチ湧かない。
別に何も変わらないいつもと同じ
授業受けて、部活やって、寝て、
毎日同じ事の繰り返しだ。とさっき
までは思ってた。


「…阿部が好き。」


ただの幼馴染みだと思っていた奴から
呼びだされて、告白。
今まで一番近くにいて気づかないとか
バカだな俺。
真っ赤な顔で俺を見上げてくる幼馴染み
を見て、多分俺も真っ赤なんだろうなと
妙に熱い顔を手で覆う。


「なんか、言ってよ…ばか」
「お、おう。」


告白されて嬉しくねえ男なんかいねえ
と思った。告われて初めて自覚する
自分の気持ちに戸惑った。というか、
照れ隠しもある。ただの幼馴染みとし
か思ってなかったのに。心臓がうるさ
くなった。


「野球する阿部には恋愛とか邪魔だよね」


ごめ、んね…。と今にも泣き崩れそう
な幼馴染みを抱き締める。


「あ、ああべっ?!」
「んだよ、黙ってろばか。」
「…!」
「好きだ。」


耳元で小さく言うとバタバタと暴れ出す
から解放してやると真っ赤な上に涙目な
表情。


「…誕生日おめでとうっ、隆也!」


それで、名前で呼んでへにゃりと笑うか
ら本当、反則だよな。再びコイツを抱き
寄せてキスをした。


「っ可愛すぎ。」
「…!」


俺のキスで微睡むコイツにもう一度する
と夢じゃないよねと一言。


「夢じゃねーよ。」
「ふは、良かったあ…」
「隆也大好き」
「あんま言うな」
「照れた!」


嬉しそうに笑うこいつに俺はただただ
照れるしかなかった。
こういうの、慣れる気がしねえ。



12月11日


(誕生日が記念日になった。)

20111211.








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