おお振り(短編) | ナノ







肩にかけていたカバンがずり落ちた。
見慣れた後ろ姿に声をかけようとして
やめた。なぜかって、俺の兄貴と隣に
住んでる同級生いわゆる幼馴染が楽し
そうに買い物をしていたからだ。
いつもなら野球部が終わるのを待って
いて俺と一緒に帰るのに今日は、ごめん!
といそいそした態度だった気いする。
なんで、そこで気づかなかったんだろ。


「・・・んだよ。」


いつの間に二人はそんなに仲良く買い物
する仲になったんだか。
つーか、毎日のように俺ん家に遊びに来てた
のは兄貴目当てだったのかよ。別に、期待して
た訳じゃねーけど。なんかムカつく。俺の知らない
ところで、兄貴と買い物なんかして楽しそうに
ヘラヘラ笑ってんじゃねーよ。あんな顔俺に見せた
ことあったっけ?


「にいだったらどれが似合うと思う?」
「んー、そうだな・・・。」


遠くからはっきりと聞こえる二人の会話。
どうやら二人でマフラーを選んでいるらしい。
いつからだよ、兄貴のこと。いつから好きだった
んだよ。聞けるもんなら今すぐ飛んで行って聞きたい。
落ちたカバンを拾って肩にかけ直し
ゆっくりと家に帰るとそのままベッド
へ直行した。


「・・・」
「・・ーちゃん」


ベッドに倒れ込んでどれくらい経ったか
よく分からなくなった頃にだれかに名前を
呼ばれていつの間にかぶっ飛んでた意識が
戻った。


「こーちゃんってば」
「んだよ・・・」
「風邪ひくって」
「いーよ、別に」


俺を呼んでいたのは幼馴染で目を開けたら
目の前にいたけど、今は目も合わせたくなくて
再び伏せると、せっかく心配してるのにこーち
ゃんのばーか!とそれだけ言って背中に柔らか
いものを投げつけて出て行った。


「・・・これ、!」


床に落ちていた柔らかい物の正体は今日兄貴と
幼馴染が買い物していたマフラーだった。


「あいつ・・・」

マフラーの間に紙きれが挟まっていたらしく
はらりと床に落ちる。

一日早いけど誕生日おめでとう!
こーちゃんだーい好き。

と書かれた小さな何てことのないただの
薄っぺらい紙切れを見つめた。



誕生日の前日


(ばっかやろう。)
(俺なんか大好き以上なんだよ。)

20111128.








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