好きだと言ったときの表情、本気だと言ったときの表情、それらを想像しながら泣く。


今日は普段着に髪の毛に簪も結ったりしていない。先日僕に爆弾を落とした彼女が思い人であるミナキはスイクンを追いかけてもういないのに僕の家に来てくれることが純粋に嬉しい。フワライドから手を離して地上に降りるとまるで天女の様だと感じた。そういえば今日はキキョウシティに行くと留守電にあったというのを思い出した。

「みてみて、バッジよ。キキョウで奪って来たの」
「ハヤトも可哀想に十万ボルトを使ったんだろう。フワライドで」
「私のこと分かってるマツバ好きよ」

お茶入れてきて上げるからそこで待ってて。心臓がやけに煩くなりながら「ああ」と返事した。声は高くなったり裏返ってなかっただろうか。白いワンピースの裾を揺らしながら台所に向かった彼女を見ながら感じていた。まさか、突然好きだと言われるとは思わなかった。知っていても、親愛の意味だと知っていても心臓に悪い。

戻ってきたスミレが不思議そうに僕の事を見ていたが何でもないと返すとそうと微笑んで返事をするからまた心臓に悪くなる。期待してしまうじゃないか。

「お姉様がシンオウでバッジを集めてリーグに行ったって聞いたら私もしたくなったの」
「良くエンジュの外に出ていいと許されたね」
「実はお父様が今度の旅の予行練習に近場だから良いってね」
「成程。ハヤトが犠牲になったのか」

フワライドを見てみればゲンガーに悪戯されていた。フワライドも犠牲になったのだ。そんな二匹を見ているとスミレはコタツの上に項垂れた。話を聞いてみればスミレの爺さんに旅に出ることに反対された。旅に出たいと思ってるのが悪い事なんだろうかと言われた。

スミレの妹は今はカントーにいたり数人いる姉たちは他の地方にいる。考えてみれば彼女だけがこの場所に閉じ込められているのだ。コガネやキキョウまでが彼女のギリギリの行動範囲。彼女だけ他の姉妹とは違う扱いをされている。

「私もお姉様みたいにシンオウに行きたいわ」

一番上の姉からの手紙の事を話された。向こうでバッジを集めてリーグまで行って負けてしまった。お姉ちゃんは今ニートになってしまった。笑いながらその手紙を見せてもらっていたが真面目な顔になった彼女に僕も真面目な顔になってしまう。


「あのね。ミナキが好きだから追いかけたいから旅に出たいとかそういうのじゃないの。そりゃ好きだけど、自由になりたいのよ」
「…仕方ないだろ。昔からじゃないか」


頷きながら悲しそうな顔をしていた。何をいまさらな事を考えているんだろうか。ホウオウを守る一族としての務めがあるのだから仕方ないのに。辛そうに見える彼女の長い髪を掬って、弄びながらこれからスミレがいなくなる事を考えた。好きなら好きと伝えればいい物を、何で伝えずに怠惰に日常を過ごしているのかと。

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