英雄は国葬のときに何を思うのか、ぼんやりと考えながら僕は死の合図を待つ。
からんからんとやけに響く音が庭の方から聞こえてくる。ミナキと共に庭を見てみるとやけに嬉しそうな声が聞こえ、次はこの地方では珍しいユキメノコが現れた。このポケモンの持ち主は誰だか知っている。下駄の音と真っ赤な着物を着た彼女が息を切らしてやってきた。
嬉しそうに下駄を脱いで一気にこちらまでやってきた。炬燵に足を入れて温かそうにしている。もう冬だ。雪でゲンカー達がユキメノコと一緒に外で遊んでいる。さぶ区はないんだろうか。
「久しぶりだなスミレ」
「そうね。マツバったら酷い来てるなら教えてくれればいいのに」
「忙しいと思って黙ってたんだ」
「まぁ、良いじゃないか。それより羊羹を食べてみてくれ」
一口食べてよほど美味しかったのはすぐに皿の上の羊羹がなくなった。ミナキが新しく箱から出した羊羹もすぐに食べた。それからはミナキが聞いたシンオウについての話が始まった。黄色い簪が揺れてはしゃいでいるように思う。
「シンオウって色々と伝説があるから調べたいのよね」
それに、ユキメノコの故郷見てみたいじゃない。それに色々と伝説が残っていてユキメノコが雪山で死んでしまった女性の幽霊だとか言うじゃない気になるでしょ。ちりんちりん、嬉しそうにしている。
ミナキはそうだなと普通の変事を返して、当たり障りのないように見える。茶をゆっくりと飲みながらそんな事を思った。それにしてもゴーストポケモン達がいるせいか冬のせいかとても夜は冷え込む。ユキメノコ何て本当に冷たく感じる。
「スイクンがこの前、遠目だったが見る事が出来た」
「本当に好きねミナキは」
「だって凄く綺麗で神秘的だとは思わないか」
笑ってミナキの話に耳を傾けて、僕はその話についていけなくなっていく。二人だけの世界で楽しそうにスミレと話しているミナキが羨ましい。僕だって一緒に話したいのに、ゲンガー達は楽しそうに遊んでいる。嫉妬するみたいにさっき食べた羊羹みたいに甘ったるい感じの嫌な感情がある。
スイクンだとかシンオウ、ユキメノコ。話に入って行けるのはスイクンの話しかないのは仕方ない。けれども、ミナキは少なくとも僕がスミレの事を好きだというのを知っているハズなのに。二人だけで話して、それが羨ましくて妬ましくて見てしまう。
「ああ、すまない。二人だけで盛り上がってしまった」
「悪いねマツバ故意じゃないから許して」
「まったく、謝るなら僕も入れる話にしておいてくれ」
ゲンガーが笑いながらこちらを見ている。ちりんちりん、簪が揺れてスミレもけらけらと笑っている。
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