虎南はカセットテープをポケットにしまった。
泉兎が調査書をひらりと出して「これもいい?」と言った。
「うん。調査書もテープも制圧終わったら破棄して大丈夫だから」
「オッケィ」
調査書もしまう。
雨は弱まることなく、まだ降っていた。
こんな天気だからカフェの中は未だに彼ら以外の客が誰1人いない。
「マスター、サンドイッチちょうだい〜」
「わかった」
「おま…っ…コーヒー2杯飲んでサンドイッチかよ…」
虎南が呆れる。
カフェはこれまた宏人の知り合いがマスターをやっている店。
マスターはどう見ても宏人と同年代に見える。
彼が特別総務部の人と接触するときはよくこのカフェを使う。
すぐにサンドイッチが来て、頬張る。
「あー…やっぱうま〜」
「へぇ…」
「食う?」
「あ、うん」
宏人は2人にサンドイッチが入ったバスケットを差し出した。
虎南がハムときゅうり、泉兎がたまごのサンドイッチを取った。
「!」
「う…うまっ!」
「でしょでしょ!?」
マスターがそんな3人を微笑みながら見る。
「ま…マスターっ!」
「ん?」
目を輝かせてマスターに言ったのは、料理が好きな泉兎だった。
「こ…これ、レシピ教えてください!」
「あ、うん。いいよ」
と…いうことで。
マスターのサンドイッチ講座が始まった。
「え、何?泉兎、料理好きなの?」
「最近のマイブームらしいぜ」
「へぇ…」
目を真ん丸にして泉兎とマスターを交互に見る宏人。
見た感じ、サンドイッチだけでなく何か飲み物も教わっているようだった。
「す…すげぇ」
と泉兎が呟くのが聞こえた。
「そういえばさ」
虎南が宏人に言う。
「あ…うん、何?」
「イーグル・カンパニーに信頼される探偵…だけど俺、宏人のことあんま知らねぇな」
「…確かにね…でも知っても楽しいこと無いよ」
「詮索する気はないけどな」
ははっ、と虎南は笑った。
同時にマスターの料理講座が終わったようで、泉兎が戻ってきた。
「ありがとうマスター!」
「うん」
マスターは微笑んだ。「さて…そろそろ戻るかなぁ」
虎南がカウンターから立った。
「そうだな」
「そっか…また何か調べてほしいことあったら言ってよ」
「うん」
2人は代金をコーヒーの隣に置き、扉へ向かって歩いた。
弱まらない雨に「うわ…」と呟く。
「じゃあ」
「またな、宏人」
「うん…またね。虎南、泉兎」
そう言って虎南と泉兎はカフェを出た。
カランコロン…という綺麗な音がまた中で響いた。




虎南・泉兎side…


店を出て、すぐ大雨でズボンの裾が濡れた。
「やっぱり…」
「まぁ、わかりきってたことだけどね…」
傘をさしてもほとんど意味が無い。
虎南が携帯電話を出し、電話し始めた。
迎えを頼んだのだ。
「あ、あぁ、そう。さっきの辺り…よろしくな…あぁ、じゃ」
行きで送ってもらった人と同じ人物のようだ。
「来てくれるって?」
「あぁ。この辺で待ってようぜ」
泉兎が頷いた。
2人は近くにあったアクセサリー屋の屋根で雨宿りすることにした。
「こんなザーザー降りの雨、久しぶりだ」
はぁ…とため息をつく虎南。
すぐに迎えが来て、2人は後部座席に乗った。
イーグル・カンパニーへ戻る。
「はいよ」
泉兎が虎南に細長い何かを手渡した。
よく見れば泉兎自身も同じものを持っている。
日本刀。
虎南が少しだけ抜刀。
鍔から5cmほどだけ抜く。
綺麗な輝きを放ち、彼の目が刀身に映った。
「さて…オツトメ開始…ってとこか?」
「だな…気ィ、抜くなよ」




*




宏人side…


2人が置いた小銭の下には、1枚の紙。
宏人がそれを開くと、それは急いでいたのか殴り書きで虎南と泉兎の携帯電話の電話番号が書かれていた。
「連絡先?」
マスターはそれを覗きこんだ。
「うん」
「泉兎君…だっけ?彼、また来るってさ」
「さすがだよ…空羅の料理はうまいからね。泉兎も料理好きだって、虎南が言ってた」
「嬉しいね」
微かに照れ顔なマスター…いや、空羅と呼ばれた青年。
宏人はそのメモをジーパンのポケットにしまって、顔を上げた。
カラン…とアイスコーヒーの氷がまた音をたてた。
「また一波乱ありそうだね……巴」




END




後書き…

…グダグダですね…(泣)
しかもメインのはずの虎南君と泉兎君まったく活躍してねえぇぇ…(TロT)
本当にすみませんでした…。
でも、2人とコラボさせていただいて、本当に楽しかったですっ!\(^o^)/
ありがとうございましたっ!

2009.08.23. 蒼屋那岐



>>蒼屋那岐さま

うちのバカ共を書いてもらおう! という企画を初めて立ち上げ、その癖経験が皆無に等しかったテンへ声をかけてくださったのが、那岐さまでした。段取りの悪いあたしに優しく付き合ってくださり、こんな素敵な作品を書いてくださり、おまけにコラボまで取り入れてくださいました!
那岐さまには、ほんともう感謝の一言に尽きます。どうもありがとうございました!(^^)

テン






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