Disse il ragazzo.













「未だ、か…」






あれから一週間が経った


ファミリーを手こずらせた、婦女誘拐事件が
一般人の手によって
呆気なく、解決されてから。








「それほどまでに、強い人物なら…」












机の上に山積みとなった報告書
だがその中身は、依然として変化のないものだった

何も手掛かりがないことなど
その白紙に近いそれが、すでに物語っている。






「………」







15歳の彼が
これほどまでの細密な仕事までもをこなすとは

それは、すでに彼によって処理されたものだ


ふと懐かしい言葉が
彼の脳を掠めた











「あなたは、心の広い人
優しい人よ

フェリチータやリベルタ
仲間と多くのことを乗り越えたあなたなら
もう分かるわね?

今度はあなた自身の願いで、その力を奮いなさいノヴァ

自分のために伺ったりしないで、心から笑いたいときは
笑って?」









自分が人として
アルカナ能力の使い手として

第2の母親として敬愛する
マンマに向けられた気持ちはそれだった。





アルカナデュエロが、自分の幼なじみの勝利で幕を閉じ

その人がファミリーの新しいドンナとして迎えられ

自分は、これからも聖杯の幹部として
このアルカナファミリアでの使命を果たす


そう続いていくのだと思い浮かべたときに
贈られた言葉だ。










幼いころから、母親代わりとして
たくさんの愛情を与えてくれた女性の囁かな願い

だがそれを聞いた彼の明日に
何か変化が訪れることはなかった


時間はたっぷりとある
自分の生き方を変えることも、今の己には十分容易いことだ

それでも彼は、変えようとはしなかった。

ここにいる、と



だが決して彼は、マンマのその気持ちを
無碍にしたつもりはない



その願い通りに

ただ純粋に、ここにいたいと
“願った”自分がいるだけだ







「…それに、約束したからな」





















もう一度、報告書に目を通す








「………」







フェルが捕まえた複数の男たち。
彼らは何もはかなかった。

いやその口は、何も知らないようだった。
まるで、記憶操作でもされたかのように…

取調べを行おうにも、何も知らないとの一点張りで、赤毛の女性の特徴を得ることも
ましてや彼らの対処についても難しくなってしまったのだ。




 


“誘拐事件解決に関与したその人物
見つけ次第 オレのところへ連れてこい”




少しの偶然が いくつも重なって
解決された事件なら




“オレからの願いだ
各セリエの幹部にこれを伝えろ”




なにもファミリーの幹部総出で赴く必要もない


だが現実
これが“パーパ”直々の命令なのだ

ならば…









「僕は、それに従うまでだ」











フッと、年相応の
だれもが願った笑顔が、そこに浮かび上がったことに

日本刀を携えるノヴァは
気づいてはいなかった。



























部屋を出るノヴァは、続く廊下を歩く諜報部の連中を目にする

彼も執務室からでて、列に並ぶようにその最後尾に近づいた




部下に解散令をだしたのは、煙草をくわえたスキンヘッドではなく
金髪男だった。

それを視界の端に捉え
人が散っていきはじめると、すぐに声を掛ける







「おい、リベルタ」







金髪の彼はすぐに反応を見せ足を止めた

だが振り返る彼の表情は
廊下で見かけたものとは、打って変わって不機嫌そうだ。







「まぁーたお前かよ、ノヴァ」

「………悪かったな、それより」

「今日も収穫なし」







さあ、用も済んだ!

と身体全身で表現するかのように
リベルタは踵を返す
が、

そう易々と逃すノヴァでもない







「待て、僕の話を聞け」

「………」







腕を即差に掴まれる
不愉快に感じたが
彼は、振り払うことはしなかった







「ったく、なんだよ」

「お前が止まらないのが悪い。……何か情報はないのか」

「ないって言っただろぅ?お嬢と同じ年頃の女の子なんて腐るほどいるし。そもそも、俺は捕まえること事態に反対だ」






今度こそは
彼の腕を振り払った。





自分と同じ年頃の
まして性別のちがう女の子を

どうして幹部総出で探し出す必要がある?

姿を眩ませているからこの一週間
一度として、姿を、見た者がいないのだ


仮に騒ぎになったとしても
レガーロを、守ったんだ。

なのに
それを、どうしてわざわざ
縛る縄を手に、自由を奪う必要が…




……。

ほんの些細な偶然ばかりが
重なっただけかもしれないではないか。






 




リベルタが、ノヴァに向き合う








「何だってお前、そんなに必死なんだ」

「パーパの命だからだ。」








迷いなく、あまりにも即答だったそれに
リベルタが、すぐに言葉を返すことはなかった

その沈黙に何かを感じ取る。









「…ルカもデビトも、パーチェも何にも手掛かりなしだって言うしさ…
お嬢も、朝からずっと部屋開けていねぇみたいだし」







思い出したようにリベルタが呟いた
それをきいて、ノヴァの脳裏に一人の少女が浮かび上がる。






「……フェル、」






目を細めたノヴァが
リベルタの言葉をきいて

何かを思案するように、手を顎に添えた















「…!おい、どこに行くんだよノヴァ」







急に、自分に背を向けて歩き出した碧い奴

当然、リベルタが
突っ込まないわけがなかった


そんな彼に
ノヴァは首だけを向ける







「………少し、心当たりがある」











ゆっくりと
口を開いた。








「…捕まえて、どうするんだ?」









小さな青年の背中に
小さく呟いた


ほんの少しの不信と

ほんの少しの期待を餞に。





















四つのセリエと、諜報部

包囲網は万全だ。


なのに、引っかからない者がいる…








「確証は、ないが…」








アルカナに対抗するには、

同じ“同等”の者か
それ“以上”の者


または
“手の内”を知る者











「……その女性はきっと、アルカナ持ちだ」












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