『あの、風上………風見、さんでしたっけ?』

「違うよ名前ちゃん」

『えっ、違う?』







……この際、風上でも風見でも構わんが

俺の背に、侮辱ともとれる失礼なことをぬかす
何とも愚かで無礼極まりない女と幕府の犬がいるのは間違いない。








「我が儘の我に、挫折の挫でしょ、あと馬鹿の馬で我挫馬だよ、か・ざ・ま」

「………」

「あ、止まった。」

「やはり貴様か沖田。よほど死にたいとみえる。」








そもそも、薩摩との会合を終えた俺は下で待つ天霧の元へと向かうため、質屋の廊下を歩いていたのだ。

そんな多忙の俺を引き留めるなどとは
よほどにも奴らは俺に斬られたいらしい。








『そんなこといいから沖田さん、…風間、さん?も!たかが名前くらいで、気にしたら負けですよ』








そんなことだと?



この女 この高貴なるこの鬼を
俺をこうも貶し倒すとは

良い度胸だ
その顔、拝んでくれる………!









「……………」

「…なに。固まってるんだけどこの人」

『やだ沖田さん、この人じゃなくてこの鬼ですよ』









ドクンッ…

なんだ 俺の、心の臓が







「ていうか、何、僕のこと見て固まってない?やめてくれない?僕、そういう趣味 は…」

「誰が貴様のような人間にみとれる馬鹿がいようか」

『そうそう、風間さん』






女に声をかけられた。
女の目が俺を捕らえたその時だった。








…何が起きた?

心の臓が、煩わしい。 なぜだか分からんが、体も熱を持っている。



この女が口を開く度に 俺のこの心の臓がしめつけられるではないか。

くっ……

この女、俺に一体何をした?

そう言えばこの女

以前天霧の報告で
鬼だと判明した女ではないか?







「や、やるな…北の女鬼よ…」

『は……?』

「…風間!」

「あ、天霧か……」






天霧の肩に腕を回す。

男の肩を借りるなど 不知火に知られなどすれば、あとあと面倒だな。






「ちょっと、風間の馬鹿が、僕の名前に絡んでくるから。あんた、こいつの保護者なら、ちゃんと見てなよ。」






沖田めっ………!

天霧が俺の保護者だと? ふざけろっ






「風間、遅いから迎えにきたのです。…見ていましたが、先程から一体何を突っ立っているのです」

「……天霧」

「なんです、風間」

「この女」






天霧に支えられたまま
俺は目の前の女鬼を見る。

ドクンッ

まただ女鬼
俺にまた何かを仕掛けたな。






「か、風間っ……?」

「くっ……!これしきっ…」

「ぶっ…………なに、風間もしかしてあんた…」

「黙れ沖田、……おい天霧、この女俺に何かしたのか?」

「い、え。私には何も……」





天霧にでも分からぬとは

この女
さては新手の鬼なのか?







『風間さん、?』

「……貴様、貴様から仕掛けておいて……敵にそのような態度をとるとは、…余裕、だ な…」

『……はぁ?』

「風間、一体先程から何が…」

「よく分からん、……胸が苦しい、顔が熱い」

「……風間…もしかすると、まさか…」







まさか、何だというのだ。

新手の鬼は、このような力が使えようとは
必ずや…







「我が、妻に……!」

「風間ー、天霧!」

「不知火か」

「俺としちゃぁ大歓迎なんだがよ、生憎薩摩連中もまだいるんだ!」

「風間、いまは引きましょう」





貴様らの都合など知ったことか
生憎、俺は今日この女鬼を連れて行くと決めたのでな。






「おい、女……名は」

「風間ァ!」






もっと煩い奴らが嗅ぎつけて来たか。

さすが幕府の番犬か。






「風間ァ、名前を連れて行こうなんて、馬鹿な真似はやめるんだな!」

「……!いやいや、千鶴が目的だろ?」

「何いってんだ原田ぁ!まずは名前を救出するのが先だろうが」

「あんたまで何言ってんだ土方さん!どこを見てそう思うんだよ!」

「ほう………、原田、お前の目には、俺と名前がそんなにも釣り合うとみえるのか。」

「いや、誰もんなこと言ってねぇよ」

「やはり、見る奴には分かるのだな」

「恥ずかしい奴だなお前…」

「フンっ………天霧、不知火帰るぞ!………女鬼よ、待っていろ。」

『……はぁ。』

「必ず、迎えにいく」






振り向き際に 名前の顔をみれば
なんとも驚いた顔をしているではないか。

よほど、俺に気に入られて
信じられないほどに、嬉しいらしいな。

…フッ そそるではないか







「必ずや、我が妻に………!」
























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