私は土方さんに、ある任務を任された。







『土方さん槙堂です。』

「入れ。」

『失礼します』






部屋に行くと、途端に私は 目を見開いた。

何故かそこには、土方さんだけではなく 原田さん沖田さん、斎藤さんがいて
…そしてびっくりにも千鶴ちゃんもいて。






「しばらく、雪村を無視。監視対象として接しろ」

『………は?』













言ってしまってから
後悔した。

総司、笑うなら大声で笑って……!







『ひ、土方さん……ど、うか青筋しまってください……』

「ぶっ、…あはははっ……!!!青筋しまってくださいって、そんな自由に出したりしまったりできないからっ…」

「…………名前、いまからお前に、説明してやらぁ…」

『……………はい』




















私は、相変わらず訳の分からぬまま。

だいたい…急にそんな任務を言われても
元来千鶴ちゃんラブな私が、はい分かりましたと 了解できるはずがない内容だし。

私は、土方さんの次の言葉を促した。






『どうしてです?』





どうしてか。 土方さんはちゃんと話してくれた。






『嫌がらせ?』

「……あぁ。お前をめぐって、のな。」

『は………私?』





千鶴ちゃんにチラリと目配せをすれば 申し訳なさそうに下を向いた。
不謹慎だけど そんな仕草さえも、可愛く見えた。





『で、私がなんです?』





……土方さんではなく
一君が説明をくわえた事に少し疑問を持ちながらも

黙って、一君の話を聞いていた。

…理由は さぞかし呆れたものだった。






私は新選組の隊士であり、れっきとした幹部だ。

女として。

だが、千鶴ちゃんは違う。
私と違い隊士ではないし、女中というわけでもない。


訳あって、いま 千鶴ちゃんを新選組での預かり者としているわけだ。
だが心真っ直ぐな千鶴ちゃん。
何もせずただ飯を食べるわけにはいかないと、誰かの小姓に。


女同士なら、お互い良いだろうと
私の小姓となったわけ。

…仕事ぶりはさることながら、よく働いてくれる。

けれど それが、今回の要因だ。






「大して剣術も扱えない奴が、名前さんの小姓なんてつとまるかよ。」

『はっ!??』




原田さんが、口振りを真似て言った。
誰だそんなこと言った奴。





「お前の隊の隊士だよ」

『……………。』

「名前のこと、隊内で慕ってる奴ら多いいからなぁ。面倒見が良いとか、な。」

「だが今回、それが、裏目にでちまった。」





やっかみ。
話を聞く限り
私を女として好いている者もいるらしく…

可愛がられている千鶴ちゃん(男装)が気に食わない輩から
千鶴ちゃんは、数々の嫌がらせを
ここ数日受けたらしい。






『つまり。嫌がらせがなくなるまで、千鶴ちゃんに冷たく当たれ、と。……どのくらい です?』

「ざっと、一週間だ。」





そんなに!?
まぁ、千鶴ちゃんの身を守るため。

仕方ないんだ。





『………』

「……!!!……………あの、茉優さん?」





私はそのまま千鶴ちゃんを抱きしめた。





『……一週間分の、充電を』

「えっ…」

「ぶっ………!!!!」

『……ちょ、どうして笑うんです!』






え、君が可愛いから。
そんな、総司を無視して。







『千鶴ちゃん。明日からは、』

「……………はいっ」





よろしくね。
























「あ、名前さん………これ終わりました」

『………あ、ありがと。もう、今日はいいや。』





巡察の帰りだった。
ちょうど解散するときに、千鶴ちゃんが来て、私は任務どおりに必要以上の会話はしな くなった。

そんなこともあってか、この4日間は何もなかったらしい。 あと、3日。

そして、8日目には思いっきり千鶴ちゃんと話して 隊士達が行動を見せたなら無事任務完了。

何もなくても、一応は様子見として、普段通りに戻れる。







「名前さん。夕餉の時間です。」

『あ、先行って』

「……でも、」

『私のことはほっといてくれないかな。』






この時も、伍長である隊士と一緒だった為。 しっかりと千鶴ちゃんと湯浴びの際に段取っていた通り、千鶴ちゃんは、しつこく。

私はあくまでも
邪険そうなというスタンスで。

だけど、間が悪かった。

部屋に戻ろうと、広間を後にし
廊下を歩いていた。





「おい。……まだ千鶴にあんな態度とってんのかよ」





藤堂か。
夕餉の後だった
きっと、見ていたんだ。


……仲間思いの奴だとは思っていたけど。
藤堂って、こんなムキになる奴だっけ。

暫く両者無言。
藤堂からは相変わらず無言の圧力。



……あー、 もういーや。

土方さんには怒られるかもだけど。
仕方がない、任務のこと────



私が、俯いていた顔をあげた。
藤堂は私をずっと見ていたみたい。

すぐに、目があった。






『──あの、勘違いしてるみたいだけどさ……私、別に自分の意志で千鶴ちゃんを邪険 に扱ってるわけじゃないから。』

「………」





藤堂は、まだ納得のいかない様子。 そりゃ、そーだよね。
だって。
私が、何の理由も無しに故意に千鶴ちゃんに冷たくあたってるみたいに聞こえるもん。







『……とにかく、詳しくは言えないけど。私、千鶴ちゃんのこと、嫌いになったわけ じゃな───』

「そこまで、だ。」







誰かに言葉を遮られた。

……誰だよ、

……………あ。






『土方さん』

「おい名前。何勝手に命令に背いてんだ」

『……ごめんなさい』

「ハァ………。馬鹿かお前、もっと期間が延びるだけだぞ、嫌なんだろ?」






藤堂の方をチラリと見て、私に低く告げる。
それを言われては、適わない。






「俺の部屋にこい」

『………はーい。すぐにー』








上手く言いくるめられた気がするけど。
まだ、何か言いた気な藤堂を残し、 土方さんは私に あっちいけと顎で自分の部屋を示す。

私は従うがままに、土方さんの部屋へと急いだ。



















「平助……お前があいつに言うことは間違っちゃいねーが。…」

「…………」

「……ハァ。………思う所があるとは思うがな、あいつも乗り気ってわけじゃ ねぇんだ。……あんまり追求してやるな。」

「な、土方さ」

「それに、お前が信じてやりゃーいい話だろーがよ」

「……どーいう、意味だよ。」

「……それは、言えねーな。」








土方は藤堂を一瞥する。
これ以上、深入りはするなと。

キツい視線を。









「あんなに、仲良かったじゃねぇかよ……」












千鶴が嫌いになったわけじゃないってことは
土方さんが関わってるってことは
任務のためだと言った、名前の言葉は本当なのだろう。

どちらにせよ、千鶴を邪険にしなければならない任務って
いったいどんな任務があるっていうんだよ。


……お前は、任務だからって非道になれる奴だってのか?




3日ほど、前から。

茉優が
人が変わったように冷たくなっていた。








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