『別に、認められたいわけじゃない』
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敬愛する近藤の隣に立つ
それを見て

土方の瞳孔は、悲鳴をあげた。









「緋月、架生……よろしく」

「えー、架生ちゃんには、本日から真選組に入隊してもらうことになった!」






緋月架生と紹介されたそれを見て
何か違和感を感じたのは

きっと
土方だけではないだろう






「近藤さん」

「ん?どうした総悟、架生ちゃんに何か質問でもあるのか」






近藤は、架生の肩に手を置いた。






「いや、そいつ……女だろィ」






沖田の尤もな疑問に
その場にいた隊士たちも、ざわめきを一層大きなものにした






「そうだとも!正真正銘女の子だ!何か問題あるか?」





だが近藤は、そんな隊士たちのざわめきを完全無視し
別段悪びれる様子もなく、隣の無表情な架生の頭を撫で回した。






「いや近藤さん、思いっきりそこが問題だろ」

「むむ。トシもか!」

「局長のあんたが決めたことに、いちいちいちゃもん付ける気はねぇーよ。だがな、仮にもここは男所帯の真選組だ」







真選組副長、土方十四郎は
近藤から
こんどはその“緋月”を見る。







「志気が下がる」

「下がらん!」

「隊気が乱れる」

「乱れん!」








いまの近藤に何を言おうが
この少女ともとれる架生を真選組に入隊させる意志は、変わらないのだろう。

土方は、無駄だと悟った。








「…………」







しっかし、さっきからこいつ
何にも喋らねぇ…

だが、この力強い目つきは何だ?
この殺気も…








土方は、緋月架生を探るような目で眺める。




年は沖田と同じくらいか
それより少し年上くらいだろう

整った顔立ちの持ち主だが
それにどこか冷たい印象を受ける

そして、その艶のある黒髪が
余計に拍車をかけていた

そこらにいる同年代の娘と、何ら変わりない







“気を抜いたら、ヤバい”











「……分かった、じゃあ近藤さん」

「ん?何だ、トシ」












近藤が土方の話しに耳を傾けた。

途端に
土方の目つきが変わる。












真選組に、女…?

ふざけんじゃねぇ



ここは、そう易々と
“女”が足を踏み入れてもいい場所じゃねぇーんだよ




俺は絶対、認めねェ



近藤さん
あんたが、俺になんと言おうがなァ…











鋭い目つきは変えることなく
架生を捕らえたまま、土方は近藤に切り出した。








「そいつの腕試しだ。その女に、入隊試験をさせろ」

「!…………と、トシ!それはだなぁ…」

「…………」







ほらみろ、
近藤さんの顔色が瞬時に変わりやがった。


この人の性格だ
どういう目的かはしらねが、大方
ここに入隊したいと“そいつ”たっての願いを
近藤さんが聞き入れちまった

そんなもんだろ…

刀の腕だって
大したことねぇーんだろうな







「…………」







思惑通りの、“事”で
俄然、入隊反対の意思が固まるが


焦る近藤を、隣で目にしながらも

尚もその姿勢を崩さない架生に
苛々が募る土方。












「トシ、待て…いやお前のいうことは尤もなんだが」

「近藤さん、ただの隊士の実力試しだ」

「いや…だがな」

『いいよ、やろう。』














彼らの言葉を遮ったのは

彼らでもなく
この場にいる、隊士たちでもなく










「ちょ、とー!架生ちゃん」

『煩いですゴリさん』

「ごっ、ゴリッ……!?」

『おい、そこの逆三前髪』






架生は
柄が緋であしらわれたのは珍しい自身の刀に手を添える。












『私が女だからって、…手ぇ抜いたら死ぬよ。副長さん?』

「んだとっ……!」







架生の言葉に、怒りを露わにする土方たが
彼女の放つ殺気の凄さに

圧倒されたことも事実。











「女があんまり舐めたこと言ってっと、…………後で後悔するぞ」











緋月架生

無事、入隊試験を通過した彼女は




この真選組で、副長助勤兼小姓の責務を
追うこととなった。










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