廊下、通路脇からの視線





席は、割と遠めで
いつも眺めているだけだったけれど

それでも、見ているだけでも十分だったのに。


二年のクラス発表は、どっちつかずだった。
ここで、離れてしまうだなんて。




彼と離れてしまって、唯一
彼と私の橋渡しをしてくれているのは、一本の長いこの廊下だ。

移動の授業のさい、教室の前を通過する

彼の席は、女の子友達に確認済み。

ほんの一瞬だけ見える
彼の姿
彼の黒髪
聞こえてくる
落ち着いた彼の笑い声


これだけで、十分…

そうして私が、何も行動に移さないうちに
彼には可愛い彼女ができる。
最悪の場合、そのまま卒業ということも十分ありえること。

だから、はじめから
どこかで冷めている。

そうして、心の調節をして。




でもどうしても、無理なときは
友達に連れ立ってもらい
彼のクラスに顔を出す。

そして、彼が廊下でたむろする傍で
私は心を沈めながら、別の女の子と会話を広げていくの。


ちょっと、友人から視線を逸らすと
たまに
ごくたまに、目が合うときは
少しすると何事もなく、さまよう視線はあっけなく逸らされる。

その場から、去ってから
友人に
彼が見ていたよ、という言葉に
死ぬほど、舞い上がってしまうの。





少しでも、彼の視界に入ることができたら

記憶に、私の姿をとどまらせることができたら

また私が
この廊下を通ったときに

少しでも、教室から視線を這わせてくれていたらいいなと。


そう、思って
止まないのだ。




この廊下は、彼との橋渡しを兼ねる
唯一のもの。

そう、私が思っていると
彼がもし知ってしまったら。


彼は、もう
その教室からは

出てきてはくれなくなるのだろうか。









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