『…………ザキさん、…いま何処へ?』






彼の所属の秘書課もみたし
受け持っているはずの管理室もみた。

それなのに、みつからない。
いない。



食堂はおろか、給湯室にもいないという始末。






『…このままじゃ、資料作成どころかドラマ見逃しちゃうし 確実に週明けまで仕事持ち越しになっちゃう。 ………土日出勤なんて絶対にいや……。 山崎さん、本当に何処にいるわけ??』





諦めかけ、とぼとぼもと来たフロアの廊下を 力無く戻っていく私。


事の発端は
資料室へ行ったが開いてなく、その鍵も誰か持ち出してしまったことからはじまる。



で、だ。

松平さんに頼まれた資料を制作すべく 資料を集めているのだが
その資料を管理している資料室の鍵は秘書課の人が管理しているため

スペアキーを借りにこうして
秘書課の山崎退さんを捜しているわけなの。







『……………』






そんな、私の視界の端に

ある影をみつけた。












『………!いたっ、いたいた!!!』








飛び込んできたのは、捜し求めていたまさにソレ!







『山崎さーん!』





 


廊下の端に、これでもかっていうくらいに近寄って
手すりから身を乗り出すように、体を前のめりにさせて思いっきり名前を叫んだ。
 







「…………………花純ちゃん?」







響き渡る私の声を聞いて
ワンテンポ遅れて辺りをキョロキョロ見渡す山崎さん。








『上っ……上です山崎さん!』
 





それもそのはず
私が山崎さんを見つけ出した場所はこことは別の下階のフロア。

所謂、ロビーの受付前。

私は、彼の頭上から声を掛けているの。







「!上………あ、花純ちゃん!」








“おーい”と 私に向けて手を振返してくれた。

ちなみに、なぜ山崎さんが受付前にいるかというと……

受付嬢のたまちゃんを眺めるため。



吹き抜けの造りのそこは、私のいるフロアの階からは丸見えなわけです。








『山崎さーん!』

「え??……なーにー?花純ちゃん!」







私は、そんな山崎さんに再度呼びかける。







『わたしー、山崎さんに伺いたいことがーあるんですー!』







焦る気持ちに勝てず 私は、とにかく叫んだ。








「えー??ごめーん!響きすぎてて、何言ってるのかわかんな いー」

『……………』








……落ち着け

落ち着け私。




山崎さんのせいでも、もちろん私も悪くない。
これは、このフロアが吹き抜けなのが悪いの。

…苛々する気持ちを落ち着かせもう一度、呼吸を整える。

響かない程におさえつつ。







『…山崎さん、こっちに来てー!』








注意を払いつつ 叫んだ。

それでもやっぱり
山崎さんの耳にはワンテンポ遅れて届いたようで…









「……え、俺が行くの??」

『………』








そう呟いた山崎さんの声が
暫く経って漸く、私の耳に届いて



私の小さな小さな
舌打ちが

響いた。















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