『……気に入らない』





先週は、私の男友達の彼女

五日前は、私の高校からの親友を彼は隣に連れて歩いていた。



「…でね、………………聞いてる、美悠ちゃん?」

『うん、聞いてる。』

「昨日風間さんからね、来週末の文化祭のダン ス!………ってやっぱり聞いてないでしょ美悠ちゃん!」

『うん』

「………」



そっけない私の返しに

千鶴は少ししょんぼりと、肩をさげて
頼んだメロンソーダに口をつけた。



『聞いてるよ。…で?ダンスって?』

「もうすぐ文化祭でしょ?」

『うん』

「あのね、文化祭実行委員で出た新しい企画でね、後夜祭のキャンプファイヤーでフォークダンスを踊ることになって」

『……誘われたんだ…?』

「!…よく分かったね美悠ちゃん………でも惜しい!!!」

『………お、しい?』

「私が、誘ったの」

『………あのね千鶴』

「なぁに?美悠ちゃん」

『……』





キョトンとした表情を浮かべながら
私の言葉にそうふわふわして返事をする千鶴だけど

その目先は、携帯画面



『……何、何の画像?』



私が、ミ○ドの白いテーブルから向いの千鶴の方へ、ドーナツ片手に身を乗り出す
そして携帯のディスプレイを覗き見る。

…が、うまく千鶴にかわされた。




「ふふふっ、……これはね、風間さんの写真だよ」

『………へー。見せて』




頬杖をつきながら聞いていた千鶴の話。

千鶴のその写真が少し気になった。
当然、今度こそ見せて貰うつもりでいたのに。




「だ、ダメだよっ!」

『ど、どうしてよ…』

「レアモノ、だから」




素早く携帯を動かし千鶴は画面を自分の方へ向けて、高くあげながらその中身を眺めている。



「だって、美悠ちゃん可愛いから。」

『……?』

「この風間さんを見たらね?美悠ちゃんもきっ と、風間さんのこと好きになっちゃうでしょ?」

『……………。』

「そしたら私、勝ち目なくなっちゃう」



だから見せてあげなーい、と千鶴は携帯をバッグの中へとしまう。



「じゃあ私、そろそろ行くね」



そういうと今度はバッグから財布を取り出して千鶴は、野口さんを二枚テーブルの上に置いた。

当然私はこのあとも出来たら千鶴とショッピングしようかなとか、勝手に思っていたのに

私の口からは、何ともマヌケな声が漏れた。



『ちょ、もう帰るの?』

「うん!このあと予定があるの」

『行くって……どこに、誰の…』



私が叫ぶ中千鶴はズンズンと、レストランの出口へと向かっては小さくなっていく。






『千鶴、千鶴っ……!』






千鶴には確かに私の声が聞こえているのに
千鶴は私を振り返らない。

私はそれでも───────…











『……千、………………』







出口のところで千鶴が止まった。

振り返って
私にむけて、笑ったの




『……………』

「あのね、美悠ちゃん……」

『……?』

「………私、美悠ちゃんの言ってることは、分かる。」







千鶴は一瞬目を細めた。







「大丈夫。私…本気じゃないよ」








可愛かった。

女の子の顔をしていた。

恋をしていた。

千鶴の気持ち、すべてを私にはわからない。
今日という日がどんなに楽しみになのかもわからない。

でも、私は見てきたんだ。



あの、風間千景の囁きに
一喜一憂していた友達を

そうして最後
彼女たちは 悲しそうに、眉を潜めていた姿を。

…その子達とは違う意味ではあれ
私もその中の一人だから。










いくら風間千景が

あの日
私を励ましてくれたとしても。


それは、きっと

ただの気まぐれ。



そんな優しさ
鵜呑みにするだけ、損なのよ。

あとで泣くのは

そういう子なの。







ずっとずっと 彼女には
私の隣で
笑っていてほしかったの。











先週は、私の男友達の彼女
五日前は、私の高校からの親友

そして彼は今日
千鶴を連れて、私のクラスの前を横切った。









 

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