01

寝返りを打とうとすると、
重たい体が私に覆いかぶさるようにして
もたれているのに気づいて目が覚めた。

ずっとこうしていたのか、
彼の腕の重みで少し肩が痛い。
それを抜けようと身をよじると、
逃がさないと言うかのように腕に力が入った。

起こしちゃったかな?と、
顔だけチラリと後ろを見れば、
愛おしい彼の寝顔。

寝ててもしかめっ面……、
彼の気が休まる時はあるのだろうか。
そんなことを思いながら、
なんとか腕からすり抜けて
先に朝の準備をする。




彼と生活を共にし始めて
もう4年は経っただろうか。
比較的仲良くやってきたと思う。
喧嘩することもなかった訳ではないが、
寝る時は絶対一緒に寝るようにし、
よっぽど大事なことでなければ
朝のうちには仲直りをするといった感じだ。


付き合いたての頃は、
お互いの意見がぶつかり合うことが多かった。
もう勝手にしろ・と
突き放されたこともあったし、
私も彼を分からず屋だと思ったりした。


そんな関係が少しずつ変わり始めたきっかけは
私が本当に腹が立って、彼の朝ご飯を
用意しなかった時だったと思う。
こんなことしたらまた怒るだろうなと思ったが
「悪かった。」と、一言。

彼がこんなにも素直になることが
あっただろうかと耳を疑った。
それから彼のご飯を用意しなかったことはない。



良く考えてみれば、彼は私に対して
随分と優しく、素直でいてくれていると思う。
歳をとり大人になったというのもあるが
何か頼みごとをした時も
大体は文句も言わずに分かった・と
言ってくれるし、
私が仕事の愚痴を吐けば、黙って聞いてくれる。


それはお前も悪いんじゃないか、
なんて期待外れなことも言わないし、
逆にお前はよく頑張ってる、
なんて似合わないことも言わない。




あれ、私ってすごい幸せなのかも?
私なんて彼より少し早く起きて朝ご飯作って
夕方は買い物して夕食作って、
その間にお風呂沸かしたりして、
そんな当たり前のことしかしてない。




「…グリムジョー、そろそろ起きる時間だよ」

「………あァ、」

「うわ、すごい寝癖。
先にシャワー浴びる?」

「……なんとかなるだろ」

「そう。ねぇ今日の帰りは何時になりそう?」

「…会議の予定もねぇし、
定時にゃ上がる予定だ。

急にどうした?」

「今日の夜は久々に外食にしたいなと思って」

「………今日、記念日かなんかだったか?」


「ううん、違うよ、ただ、
そうしたいなと思っただけ」




まだ良く分かっていないような顔をしていたが、
どこの店にするか考えとけ、と言ったから
外食に決まりだ。

彼が食卓につき、私も倣う。
私が作ったものを彼が食べる。
それだけでも幸せに思えてきた。
嬉しいな。
やっぱり私ばかりが幸せになってる気がする。



「グリムジョーは私といて、幸せ?」

「あ?お前、今日は本当にどうした、
何かあったのか?」

「違うよ。私ってグリムジョーに
すごく幸せにしてもらってる気がして、

私はグリムジョーを幸せに
できてるかなあと思ってさ、」

「幸せに決まってんだろ」

「例えば?」



「……俺の生活の中にお前がいる。

お前がいるから成り立ってる。

それ以上の幸せがどこにある?」



「うん、そうだね、ありがとう」

「てめえ何ニヤついてやがる」

「そんなこと、……
今日のディナーが楽しみで…ふふっ」


ほっぺたを軽く摘まれる。
そんなにニヤニヤしてただろうか。
今日のディナーももちろん楽しみだけど、
幸せの理由が私と一緒で嬉しかったんだ。

私達は、ちゃんと幸せでいて、
それを確かに感じてる。



そんな、ある日の朝の話。


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