2020/01/21
「お前、何してんだ。こんな倉庫なんかで」 「あっ待って! そのドア閉めちゃダメ!」 「ん?」 「あーーっ! もう! 信じられない!」 「なんだよ? おわっ、ここ暗ェな……」 「ちょっと、どいてください」 「押すなって……」 「……ああ……だめ、やっぱり開かない」 「ドアか? 貸してみろ。……確かに開かねェ。どうなってんだ、これ」 「総長が閉めちゃうから……」 「おれのせいかよ。酷ェ言いがかりだな」 「もう二時間も閉じ込められてるんですよ。やっと出られると思ったのに」 「道理で見ねェと思った」 「……はあ」 「そう落ち込むなよ。なるようになるだろ」 「総長、ここに来ること誰かに言いました?」 「いや。たまたま通りがかっただけだ」 「ですよね……って、痛ッ! 足踏まないでください!」 「お、悪ィ。よく見えなくてよ」 「暗いし、狭いし、足は踏まれるし……」 「悪かったって」 「このドア、総長の馬鹿力でなんとかなりませんか」 「壊していいなら、できるが」 「壊しましょう」 「お前そんな暴力キャラだったか?」 「一刻も早くここから出たいんです」 「腹でも下したのか」 「……最低!」 「いてっ! お前な、殴るなよ。冗談だろ」 「デリカシーが足りないとモテませんよ」 「お前にさえモテれば十分だからな、おれは」 「……」 「そこで黙るのか」 「……なんて返して欲しいんですか」 「嬉しいとか、私もです……とか?」 「自意識過剰!」 「でも間違ってねェだろ」 「……私、まだ許してませんからね。怒ってますからね。本当はこんなふうに話したくもないんですよ」 「お前の気持ちはよくわかった。仲直りしよう」 「何もわかってない!」 「いや、深く反省した。この通りだ」 「どの通りですか」 「見たまんまだよ。頭下げてる」 「……暗くて見えません」 「お前ってほんと、頑固だよな」 「……イヤになったなら、それでもいいですよ。どうせ私……」 「ならねェよ」 「……」 「イヤになんかならねェ。……だからそろそろ許してくれ。お前に無視されるのは、正直堪える」 「……私のこと、好きですか?」 「ああ。好きだ」 「どれくらい?」 「すげェたくさん」 「……もう一声」 「愛してるぞ」 「許してあげます」 「サンキュ。……それじゃ、もう触れてもいいか? さっきからずっと、抱きしめたかった」 「……ずるいです。訊かないでください……」 「暗いのが残念だな。お前の照れてる顔が見れねェ」 「もう……」 「ほら、こっち来い」 「……」 「……やっぱりお前、あったけェなあ」 「……総長。あの……、私も総長のこと……」 「よいしょっ……と! サボ君、言われた通り来たよ! せめて呼びつける理由くらい教えてくれても……って、あれ?」 「……コアラちゃん?!」 「んー、もしかして私、お邪魔だったかな?」 「ちょっと来るのが早ェな。あと五分くらい待て」 「もう! せっかく来てあげたのに、横暴だよ!」 「……総長……これはどういうことですか?」 「ドアを開けてくれる奴が必要だろ」 「そこじゃないです!」 「こういうことでもしないと、お前、おれと話そうとしねェからな」 「謀ったんですか?!」 「まァな」 「信っ……じられない!」 「おわっ! 暴れんなって」 「離してください!」 「いやだ」 「離して」 「離さねェ」 「……なんでもいいけど、サボ君、あと十分で会議始まるからね。私先に行ってるよ?」 「おう。あとでな」 「コアラちゃん、私も一緒に……。もうっ! 離してくださいってば!」 |