さらりと、髪を撫でてみる。 見た目よりも柔らかいそれは、直ぐに手の内からこぼれ落ちていってしまって、まるで我らの関係のようではないかと自嘲の笑みを漏らした。 嗚呼、それでも。 「のう、いい加減に儂の物になれ」 そう言えば返ってくるのは、何度見たことかも分からぬ上辺だけの笑み。 分かっているのに。 何故だろうか。 とても胸を掴まれる。 どうしても、欲しくなる。 「…貴方は、」 「む」 劉備の手が、儂の頬に触れるか触れないか、ぎりぎりの位置で揺れる。 わざとだと分かっていても、それを無理やり手にしようとは思えなかった。 「国を、捨てられますか?」 「それは無理だ」 問いかけに間髪いれずに答える。 その後こいつがなんと続けるかは、もう分かっている。 そう、 「私の答えも、同じですよ。曹操殿」 貴方が私のものだったならと呟いて、私はこの世に絶望する 自分で言葉にしないのは優しさか、憐れみか。 |