純粋に羨ましいと思った。


生まれた場所が違うのは仕方がない。
もう起こってしまった事象を変えることは人には過ぎたる所業である。
だから、彼等は未来を誓い合ったのだ。
死ぬ時は共に、と。


「孔明」


名前を呼ばれて顔を上げると、訝しげな視線にぶち当たった。


「…なんですか?」
「いや、珍しくぼんやりしているなぁと」


どうかしたか、と首を傾げる劉備に、孔明はにこりと微笑んだ。
その笑みにつられたのか、劉備もにへらと笑みを浮かべる。


「どうしようもないと思っていても考えてしまうのは、人の愚かしい所以でしょうね」
「うん?」


劉備の手が伸びて、孔明の頬に触れた。
指先からでも感じるぬくもりに、自然と瞼を閉じる。

その裏に浮かぶのは、村はずれで畑を耕し何の目的もなく生きていた自分。


もしもっと早く劉備と出会えていたら、


「…できることならば私も」
「孔明?」


おいて行かれる孤独を想像して震える夜は無くなるのだろうか。

孔明は胸の中でひっそりと呟いた。


このいのちなくしても


(守りたいのは貴方ひとり、どうか孤独へ突き放さないで)





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