「レイヴンさんは、僕を好きですか?」

二人きりの同室になった時の恒例行事、額におやすみなさいのキスを落とした後だった。
好きでもない奴にキスなんてしない。ひょっとして目の前の清廉潔白な青年にはそういう事をする男に見えているんだろうか。ちょっとショックだ。

「突然どしたの?俺様そんなに軽く見えるかね」
「いえ…その、」

はっきり否定しないということは当たらずとも遠からず、か。余計切なくなってきた。
俺がそんな悲哀を感じていることに気づかないフレンちゃんは、やけに真剣な顔で続けてくる。

「じゃあ、僕といてどきどきしますか?」
「当たり前じゃない。愛してるんだし」
「っ…」

言葉にすれば顔を赤らめて恥ずかしそうに嬉しそうな素振りを見せてくれるのに。
フレンちゃんはどことなく不満そうにでもと続ける。

「僕は…、こうやって同室になるたびに心臓が爆発しそうになるのに、レイヴンさんはいつもいつも…」

最後は尻切れトンボになってしまった言葉に数回瞬いてから、俺はゆっくりと微笑んだ。
そのままフレンちゃんの頬に手を伸ばすと、触れた瞬間びくりと肩が揺れる。

「それは、触ってもいいってこと?」
「え…」
「お許しが出たなら、俺は止まらないよ。いい?」

レイヴンと名乗るようになってからはあまり使わない低い声で確認をとると、真っ赤に染まった顔がほんの少しだけ縦に動いた。
ようやく触れる、愛おしむことができる。
思わず均整のとれた体にぎゅうと抱きつくと、甘い甘い匂いがした。


愛に溺れたカラスの行方


(深く深くどこまでも沈むだけ)



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