「我ニハョク分カラヌノダョ」

「我ハ、θデァルガ故ニ其レニ近スギテ理解デキヌ」

「ォ前達ニトッテ、θトハ何ナノダ?」


暗闇に浮かび上がる能面のような顔が無表情にぽつりぽつりと呟きを零す。
一面黒の為によく分からないけれど、床だと思われる場所に大の字に横になってそれを見上げたレオンティウスは、暫くぼんやりと宙に目をやってから小さく微笑んだ。

「死は私にとって冷たく恐ろしく、悲しみを与えるものでした」
「…ソウ、カ」
「けれど同時に、安らぎも与えてくれました」
「安ラギ?」

あまりにも不似合いな言葉に能面が不可解だというように奇妙に歪んだ。
それでもレオンティウスは、己が誤ったとは思わない。
ただ穏やかに笑みを浮かべて、瞳を閉じる。
映るのは、煙る戦場飛び交う怒声鮮やかに咲く赤い花槍で貫いた肉腕の中で息絶える重さ。

「漸く、争いが終わったのだと」

解放されたのだと思うと、愛しくてなりません。

囁きに耳を澄ませるように、タナトスは横たわるレオンティウスにゆっくりと顔を近づけていった。


わたしに貴方の与えるすべてをください。


(死は、確かに救いでもあるのです)




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