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秋風が吹き始めた夕方。
昼は暑さを残し、日が落ちれば冷たくなる空気。
夕日が赤くなったと思う。
すべてを赤く染める太陽の残り火。
綺麗だと思う。けど、もっと美しい焔を知っているからそんなに心は動かない。
兄さんの悪魔の焔を初めて見てから幾年か過ぎた秋の夕暮れ。
ホルスターから銃を取り出し悪魔に向けた。

早く帰りたいな…。
だって、今日は兄さんが帰りを待ってる。




帰宅すれば、夕飯のいい匂い。
すぐにお腹が反応する。
帰宅の言葉を口にすれば、カウンターキッチンで兄がおかえりと笑っていた。

卒業してからお互い祓魔師として働いてるけど兄さんが非番や早番の時はご飯を作ってくれるのが幸せ。
餌付けされている自覚はあるが、兄さんのご飯が一番美味しいと感じているのだから仕方ない。
母親の味なんて知らない。
僕が知っているのは父さんの味と兄さんの味。
すっかり舌に馴染んだ兄さんの料理。

よく男を掴むには胃袋からとか言うけど、なら、僕は気付いた時には掴まれていたことになるななんて、ぼんやり考えながらシャワー浴びてから、カウンターキッチンと繋がるリビングに行けばすでに並べられた料理にまたお腹が鳴った。

ほうれん草の胡麻和え。
肉じゃが。
大根の味噌汁。
ご飯。
焼き魚は秋刀魚。

家庭料理の見本みたい。
良妻賢母。
賢くはないが、良妻だと思う。

「いいお嫁さんになるね、兄さん。」

いただきますと言い、二人で食べはじめればやっぱり美味しくて、気分は良くなる。
そのせいか、半分冗談で半分褒め言葉として口についた軽口に兄は眉を寄せた。

『俺は、男だっ。』

「男だけど、じゃあ…主夫?」

また、主婦じゃねぇとか叫んでいたから漢字が違う説明をしながら魚に箸を進めた。
秋刀魚も美味しい。大根おろしに柚子ポン酢。醤油もいいけど、最近兄さんお気に入りの柚子ポン酢もさっぱりしていて合う。

『ふ〜ん。』

ここでは、露にしている悪魔の尻尾が揺れている。
それと同じように手の箸も揺らしながら、少しふて腐れた表情でいたのがはたりと変わった。

 
『こんな悪魔とだれが……んっ…そうだな。当てはあるか。』

その言葉にぎょっとしたのは、僕。そんな当てがあるなんて知らない。

「えっ…あるの?」

思わず、箸を止めて聞いていた。
行儀の悪いことに兄は揺らしていた箸を僕に向ける。

『お前。』

真っ直ぐ向けられた箸は僕を指していて、面食らう。

「えっ…僕?」

予想してなかったこと。
素直なんだが天の邪鬼なんだかころころ変わる兄さんがそんなことをはっきりと言ってくるとは思わなかった。

『責任取んねぇの?兄ちゃんを傷物にしたのはお前だろ。』

にやりと小悪魔な笑み。
からかう気満々なのを察し、素直に受け取り少し意地悪を。

「そっか…そうだね…いいよ。」

『えっ…。』

あっさり返事した僕に拍子抜けした間抜けな顔。
願ったりでもない申し出だから断る気もないけどさ。

「祓魔師が悪魔を花嫁にするなんて…屈服させた感があってさ。」

『………お前らしい…答えだ。』

頬杖ついて呆れてる兄を眺めながら、秋刀魚の身を解し口に運ぶ。

「でもさ、兄さんからプロポーズされるなんて思わなかったなぁ。」

『えっ…うわっ!!そんな意味じゃ!!!』

僕をからかう為にそんな大事なことを使ったことへの報復を。

「違うの?」

はぁ…兄さんの作った味噌汁は和む。やっぱりこの味が馴染んでるんだよね。
口ごもってる兄さんを眺めながら夕飯を平らげていく。

『…………違く…ない。』

空になった味噌汁のお椀をことりと置いた。
顔、真っ赤。でも、嘘はつけないというか、ついても下手な兄さんだから…。

「ふ〜ん。じゃあ、いいんだ。」

 さっき見た夕日みたいな顔。
実の兄を可愛いとか思いながら、からかい返してるんだから僕も質が悪いよね。

『っ///いいから言ってんだろ!!』

必死な顔で叫んでる兄さんを目を細め見る。

「そう…か。」

『なんだよっ!!』

ごちそうさまと言って箸を揃えて置いた。

「じゃあ…貰おうかな。」

『じゃあって…なんだよ…。』

口を尖らせている兄さん、端々の言葉でイジメ過ぎたかなと少し反省。
美味しいご飯に満たされたお腹と沢山の嬉しい言葉で満ちた胸。
兄さんだから出来る事。
兄さんにしか出来ない事。

「ん〜……。」

出来れば、場所とか選びたかったんだけど…タイミングってあると思うから、それは今かなって。
兄さんからの適当なプロポーズじゃないよ。
本心。
一度しか言わないからね。

「僕をお腹も心も満たしてくれるのは兄さんだけだから。僕のお嫁さんになってくれなきゃ困るよ。だから…」

びっくりしてる。金魚みたいに口をパクパクさせてる兄さんを見つめて、言葉を紡ぐ。

「僕に兄さんの一生をください。」

人間と悪魔だからきっと僕が先に逝ってしまうだろうけど。
でも、僕がいなくなっても、その先も兄さんは僕のものでいて欲しいっていう利己的な想いをのせたプロポーズ。

それでもいいなら、責任取るよ。
それでもいいなら、お嫁においで。
それでもいいならって、逃がす気ないけど。

『わかっ…た……くれてやる。』

ふふ、予想していた答えが聞けて嬉しい。
予想していたけどやっぱり嬉しい。

だって…兄さんも僕じゃないと満たされないでしょ?



◆雰囲気とかないけど、家族でもある二人だとこんな感じかな?


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