05きみはだれ

「──遅かったな」

マールーシャが城へ戻ると、他の全員が出迎えた
彼は「ノーウィス絡みでなければありえない光景だな」と喉奥で笑った

「マールーシャ、その子、誰?」

ラクシーヌの足元に居たノーウィスがマールーシャに駆け寄り首を傾げる
マールーシャは後ろの方で震えているナミネの腕を乱暴に引き前へ押し出した
突然の事に戸惑いマールーシャを振り返るが、彼はナミネを見下すのみ
そして突如手を掴まれ、ビクンと肩を震わせ前を見ると、ニコニコと笑う少女が其処に居た

「ノーウィス、って云うの!」
「えっ、あ‥の……」
「アンタさぁ、自己紹介も出来ない訳?」

ラクシーヌがナミネを睨む
今にも泣き出しそうになるのを堪え、ナミネは恐る恐るノーウィスと眼を合わせた

「わ、私は…ナミネ」
「なみね…ナミネ」
「ひゃ!?」

名を言われたかと思えば急に抱き付かれ、ナミネは驚きの声を上げる
しかし抱かれてる間に、自分よりも幾分幼いであろうその少女の存在は、何故か安心できるものだと思った
怖いとばかり巡っていた感情も、すっと薄れていく

「──ノーウィス」

ゼムナスが呼ぶと、ノーウィスはナミネから離れて彼の元へと行ってしまった
ゼムナスに抱き上げられるノーウィス
それを見てナミネは、何となく、羨ましいと感じた
抱き上げられたノーウィスではなく、ノーウィスを抱くゼムナスが

──この感情は何だろう?

「ナミネ。お前はあの子の記憶を読め」
「読むだけだ、鎖を解くなよ。それだけは記憶しとけ」
「……はい」

この子の記憶を探れる。それが何故か嬉しかった
今会ったばかりの少女の事を、一つでも多く知りたいと思った

「私達は、お前の事が知りたい。協力してくれるか?」

ゼムナスがノーウィスに言う
ノーウィスは笑みながら頷いた
ナミネがノーウィスに歩み寄る
ノーウィスもゼムナスの腕から降り、ナミネに近付いた

「…私が記憶を見ている間、貴方は寝ている状態になります
 立っていたら危ないので…椅子に座って下さい」
「うん」

近くにあった椅子をガタガタと少し引き、ぴょいと飛び乗った

「じゃあ…眼を瞑って下さい」

静かに瞼が瞳を隠す
それを確認すると、ナミネはそっとノーウィスの額に触れた

「──始めます」

触れた指先が熱い
ノーウィスの意識が流れ込んでくる
眠った、深い記憶…過去──








存在





狭間

仲間



勇者

ソラ

──キングダムハーツ





ナミネがバッと手を引いた。流れてきた記憶の真実に驚いて
──そんな、まさか

「──もう、終わった?」

ぱっと眼を開けノーウィスが椅子から降りる
どうだった? と笑顔で訊ねてくる彼女を見ると、見えた真実が納得出来た

──だから、この子と

「何か分かったのなら早く言わぬか」

ヴィクセンがナミネを促す
ナミネは機関の十三人を振り返り、口を開いた

「…この方は……
 ──キングダムハーツです」




──ずっと居たいと思ったの







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