03城での美味しい食事の仕方

「あー! ゼクシオン、またお肉残してるーっ」
「苦手なんですよ、肉類」
「そんな我儘言って……ってアクセル!
 食べたくないからってロクサスのお皿にトマト入れないの!」
「いやー、どーも好きになれない味で」
「って言いながら俺の皿に移すな!」
「……」
「…賑やかだな」

ノーウィスが城に来て早数日、城の雰囲気は大いに変わっていた
全体的に明るくなった空間と、交流関係
以前は揃って食事をするなどと云った事は殆ど無かった
一緒に食事をする理由と云うのは、勿論ノーウィス
朝、昼、夜の三食をノーウィスが作ってくれるのである
もっとも、例え作らなくとも、ノーウィスと食事をしたいのは変わらないのだが

「ぜーくーしーおーんー!
 ちゃんと食べてよぅ」
「…分かりましたよ」

ノーウィスに言われ、渋々一欠片口に運ぶ
飲み込んだのを確認すると、にーっとノーウィスが笑った
それを見て、「また負けましたね」とゼクシオンが微笑んだ
すると今度は、

「うあーんノーウィスっ、俺ピーマン食べたくないよー」

と、デミックスが泣き真似をする

「デミックス…じゃあ一口だけでいいから食べて、ね?」
「う〜…分かった」
「ほんと? じゃあ…」

一口分の量を箸に取り、デミックスの口元に持っていく
機関のメンバーや当のデミックスはきょとんとした表情をしている

「はい、あーん」
「! うん、あーんっ」
『!!!!??』

"はい、あーん"の図を見せられ、皆は言葉にならない声を上げる
デミックスは口をもごもごさせながら至福の笑みを浮かべた

「今日の食事も美味だったぞ、ノーウィス」

そんな中、食事を終えたらしいマールーシャがノーウィスを抱き寄せる

「……」
「…どうした?」

むう、と怪訝そうな顔をするノーウィスに、少し焦りの様な不安の表情になるマールーシャ

「私は残さず全部食べたぞ?」
「…ぎゅーにゅー飲んでない」

そう言って、マールーシャの前に置かれたコップを指差す
確かに注いだ時と量の変わりは少しも無かった

「…牛乳と云う物は朝食に飲むべきだろう」
「うん、だから朝ご飯の時にちゃんと出したよ。でもマールーシャ、飲まなかった」
「……む…」
「だから今出したの!」
「し、しかしだな…」
「…マールーシャぁ…マールーシャの為に言ってるのに…
 ぎゅーにゅーはねぇ、飲むとおっきくなれるしイライラしないんだよぉ」
「!」

ノーウィスが、俯き加減にマールーシャに言った
角度や身長差から、上目遣いにマールーシャと目を合わす

「(かっ、可愛い)
 …わ、分かった…飲む。半分でも構わないな?」
「ほんとっ?
 飲んでくれるなら、半分でもいいよ」
「あぁ、ただ…
 ノーウィスが口移しで飲ませてくれるなら全部飲むのもいいのだが──…」

マールーシャが言いながらノーウィスの顎に手をやり、上を向かせようとする。が…

「何馬鹿な事言ってンのよ」

隣に居たラクシーヌのツッコミ(鉄拳)が、見事に頬にクリティカルヒットし、失敗に終わった

「……ノーウィス…
 世話を焼いていないでそろそろお前も食べろ」
「はぁーい」

ゼムナスが言うとノーウィスは素直に返事をし、彼に近付く
そしてゼムナスの膝に乗り、自分の分の食事に手をつけ始めた
いつもノーウィスはこうしてゼムナスの膝と云う特等席で食べるのだが、二人以外のメンバーはそれが嫌で堪らない
不機嫌に彼を睨む十二人、ゼムナスは何事もないような顔でいる
ノーウィスは数分に及ぶ機関の静かな争い(?)に気付かず食事を終え、「ごちそーさまー」と食器を片付け始める

「今日は俺が手伝うよ、ノーウィス」
「うん、ありがとロクサス」

ノーウィスが立ち上がったのを見て、ロクサスも空になった食器を運び出す
ノーウィスの手伝いが出来る、それ即ち(台所で、だが)二人きりになれる事を意味する
二人きりになる好機など殆ど無いので、機関でそれをローテーションする事を決めたのだった
ロクサスと共に台所に向うノーウィスの姿を確認すると、ゼムナスは早々と自室へ行ってしまった

「リーダーだけずりーよなー」

ゼムナスが居なくなり最初に口を開いたのはアクセルだった

「ズルイって何がよ?」
「だってよー、ノーウィス、何つーかゼムナスにばっか甘えてる感じすんじゃん
 俺だってあんな風にしてーよ」

そう言いアクセルはテーブルに突っ伏した
ラクシーヌは呆れた様に息を吐く

「しゃーないでしょ、ノーウィス拾ったのあの人なんだから
 "特別"なのよ」
「…ラクシーヌ、なんか余裕あり気な喋り方だな」
「とーぜんね! アタシもあの子にとっちゃ特別だから」
「はぁ? 唯一の女だからか?」
「まぁその所為っちゃその所為ね」
「…一体何だよ〜、勿体ぶってないで教えてよー」

何時の間にか機関全員が会話に入っている
ラクシーヌはやれやれと溜息を吐いた

「アンタ達にとっちゃ物凄く羨ましい事よ
 アタシ、あの子とお風呂いつも一緒に入ってるから」

ラクシーヌの言葉に、ある者は大声を出し、ある者は絶句し、ある者は驚きの余りか固まった
それを見て、げらげらと腹を抱えて笑うラクシーヌ

「あっはっはっはっはっ!!
 アンタ達のその間抜け面、傑作だわ!!」
「盛り上がってるなぁ」
「何のお話してるのー?」

食器の片付けが終えて、ロクサスとノーウィスが戻ってきた

「あー、コイツ等がゼ「わーーーーっ!!!!」…って言ってんの」
「ええ…超聞こえない」
「…ラクシーヌ、大丈夫?」
「だっ大丈夫っ…げっほげほげほ」

大声で言葉を塞いだメンバーが可笑しくて、ラクシーヌはまた大笑いした
しかし笑い過ぎによりむせ返り咳が止まらない
ノーウィスは心配そうにラクシーヌの背を擦った
それを羨ましそうに見ている彼等の視線に気付き、ラクシーヌは意地悪く笑みを見せる

(あ、なんか嫌な予感…)

彼等は彼女の性格をよく知っている
彼女の笑みから感じる"嫌な予感"が当たる事も、またよく知っている

「ノーウィス、お風呂入りましょ!」
「うん!」

見事、予感は的中
ラクシーヌは勝ち誇った様な悪魔の笑顔を彼等に見せ、ノーウィスと二人で浴室に向うのだった







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