ハニー・ハニー
「何だ? それは」
「はちみつー」
幼いノーウィスが、琥珀色のものを、嬉しそうに切ったパンに塗りたくっている
かぷっと喰らい付いたが、パンが大きかったのか、塗った蜂蜜が多かったのか、ノーウィスの口が小さかったのか、トロトロとしたそれは見事に口元やら指やらに垂れていった
そう云えば、最近彼女が食事後に顔や手を洗うのをやたらと目撃していたのを、彼は思い出した
それでも服や卓上や床に溢さないのだからまだ綺麗な食べ方だろう、液体なのだから仕方無い──とゼムナスはパン(に、塗った蜂蜜)に悪戦苦闘しているノーウィスに少しだけ笑みを溢した
気付いたノーウィスが顔を上げゼムナスを見る
彼女の口元の蜂蜜は、先刻より勢力を増していた
「こんなもの何処にあった?」
「レクセウスがこの前くれたー」
「美味いか?」
「うん、ゼムナスも食べる?」
はい、と蜂蜜付きのパンを差し出すノーウィスに、まずは味見だ、とパンを皿に置いて、小さいその手に舌を這わした
擽ったい、とけたけた笑うノーウィス
指の蜂蜜を舐め取った後、彼の唇は今度は彼女の唇と触れ合った
啄む様に幾度も吸い付く唇がやっと離れて出た言葉は、彼の「甘い」と云う一言だった
「こんな甘いものが好きか? ノーウィスは」
「んー、普通かなぁ、美味しいけど」
「なら何故食べる」
「だって、」
「はちみつって、ゼムナスの眼の色に似てるから」
あぁ今日も、
甘い、
一日が、始まる
honey*honey (darling!)
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