参-絶体絶命

「(やばいよな〜、こりゃ
 どうするか…とりあえず早く帰って貰いたい)」
「ヒクレさん?」

ごちゃごちゃと考えていると、ソージが一歩足を進めた
最早考える余裕など無いのだと悟ったヒクレは、何とかして外に出てもらおうと言葉を発する事にした

「二人だと、ホラ、狭いだろ?」
「充分広いと思うけど」
「……そうだな」

「狭いから」と云う言訳は、普通の風呂ならかなり高い確率で通る
だがそれは「普通なら」の話な訳であって
通常は隊で区切り全員で入る大浴場
ソージは「汗臭くて不潔な風呂になんか入れない」と言ってのらりくらりと抗議(主にトシゾーの)を躱し、いつも一番に一人で
ヒクレは「皆が入ってる間に剣技の鍛練に励むから」と理由を付けて最後に一人で入っていた
「狭い」訳がない

「あー…お、沖田、いつも一番風呂じゃねぇかよ」
「昼寝してて…寝過ごしちゃったんですよ」
「……さいですか」

相も変わらずハニーフェイスで、するするとヒクレの言葉を躱していく
一番敵に回したくない奴と会ってしまった、と汗が頬を伝う

「(…どうすりゃいいんだよ…マジで
 ……考えろ、考えるんだ…!)」
「ヒクレさん
 そんなに僕と入りたくない?
 僕、そんなにヒクレさんに嫌われてた?」
「う…いや、そうじゃないけど」
「…まぁ、分かってるよ
 ヒクレさん、貴方は本当は」
「ッあっ!!?」

ソージがヒクレの右腕を掴み、そして勢い良く引き上げる
腰から上の肉体が空気に触れる
反射的に左腕で胸元を押さえるが、一本の腕だけで全てが隠せたら苦労など無い訳で

「──女の子、なんでしょう?」




・・・・。


ば   れ   た







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