レッドはトキワの森へ、グリーンはポケモンリーグへ続く道へ、それぞれの後ろ姿を見送り、シアンも目的地へとその目を向ける
横に居るヒトカゲのレイナはシアンのその希望に満ちた目を見上げた
「シアンちゃんはどこへ行きたかったの?」
「ポケモンジムだよ。父さんがくれた、お父さんの手掛かりのバッジって、ジムでジムリーダーに勝つと貰えるの」
歩き出しながらシアンが答えると、レイナが身を固くして「じ、む…」と呟いた
シアンはそんなレイナに「まだ挑戦はしないから大丈夫だよ」と笑った
「カントーには八つジムがあるんだけどね、これが何処のジムバッジなのか知らないからちょっと覗きたかっただけだよ」
「は、八個もあるの? たたかうところ…」
「…レイナはバトル嫌い?」
「……わかんない…たたかったことないから…
で、でもね! ぼく、強くなりたい! 早く強くなって、それで、それで…」
「うん?」
「あのね、それで、その…シアンちゃんを、」
「──おいお嬢ちゃん達、待て、わしの話を聞けい!」
「へっ」
突然引き止められ、言葉の途中だったがシアンとレイナはそちらに振り返った
老人が一人、ふらふらと赤い顔をしてこちらへ近付いてきている
具合でも悪いのかとシアンが一歩踏み出した所で原因が分かった。この独特の匂い──酒に酔っているのだ
「ういーひっく。こうみえてワシも昔はポケモン捕まえるの上手かったんじゃ! 信じてくれるじゃろ?」
「え、え?」
突然の質問にシアンが戸惑っていると老人は否定と判断したようで、くわっと目を見開き「こわっぱが! 証拠を見せてやる!」とシアンの手を取り近くの草むらへと足を踏み入れる
その途端、二人と一匹の前に何かポケモンが飛び出した
「あれは…」
「ビードル。ここらでよくみる虫ポケモンじゃな」
ぱかりとポケモン図鑑を開く。老人の言葉通り、図鑑には「ビードル」と表示された
「いいか! ポケモンを捕まえたけりゃボールを忘れるな! 空のボールでよーく狙って…ほれっ」
「あっボールに入った!」
「まだ揺れておるじゃろ。元気の良いポケモンはボールを破って出てくる事もある!」
ぐらぐらと地面で揺れていたボールが大人しく足元に転がった。老人は拾い上げ「どうじゃ!」と得意気に鼻を鳴らした
「お前さん新米じゃろ。わしからアドバイスをやろう!
先刻も言ったが元気の良いポケモンはボールを破って出てくる。一度破られたボールは使い物にならん、ボールはいっぱい買っておけ!
それから一度に連れていけるポケモンは六匹までじゃ。それ以上はトレーナーが管理しきれん可能性もあって危険だから協会から禁止されとる。お前さんパソコン使った事ないじゃろ? ポケモン捕まえに行く前にポケモンセンターにあるパソコンでポケモン預かりシステムに自分のボックスを登録しとくんじゃ。手持ちがいっぱいの時は自分の代わりにパソコンがポケモンを預かってくれる。どれ、ちょっと登録に行くか!」
「え、あ、は、はい! レイナ、おいで」
「う、うん!」
老人は有無を言わさずシアンの手を取って歩き出すので、慌ててシアンはレイナの手を引いた
そういえばレイナは先刻何を言いかけていたのだろうかと、ふと思い出しながら
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