「ねえ! ぽけもんとれーなーって何やるの?」

再び歩き出して暫く、ゼニガメ──カノンがレッドの袖をぐいぐいと引いた

「んー、ポケモンを捕まえて育てたり、戦わせたり…かな。戦わせたりしないで育てるの専門の人もいるけど、それはトレーナーじゃなくてブリーダーだね」
「そういえばナナミちゃんはブリーダーだよね」
「ハン! ねーちゃんはまだ見習い! そんな立派なもんじゃねーよ」
「そうかなぁ。ラッちゃんいつも毛並み綺麗なのに」

ナナミとはグリーンの姉で、ブリーダーを目指している。中々の腕前で、一人前になるまではもう目前だった。彼女はコラッタのラッちゃんと共に研究所によく顔を出して手伝いをしている
グリーンの家は、ほぼ二人と一匹で住んでいると言っても過言ではない。祖父──オーキド博士は研究所に入り浸っているし、グリーンとナナミの両親は名のある研究者として世界中飛び回って活躍しているからだ
オーキドは二人の両親と違い、自宅と研究所は目と鼻の先なのだから帰ればいいのでは?、と思うのだが、近すぎるので油断してつい帰らず過ごしてしまうようだ
レッドの家庭はといえば、母とレッドの二人暮らしである。数年前に父はポケモンマスター目指して出ていったきりだ
レッドの旅立ちを聞いても、レッドの母は「血は争えないわね」と穏やかに笑っていた

「──あっ、見て下さい、カンバンですよ」
「おっ、ほんとだ。"ようこそトキワシティへ。トキワは緑、永遠の色"だって」

リンドが前方の看板を指差した。グリーンがそれを読み上げる
──今までトキワまでならば何度も訪れていたが、町の大人達同伴であり、看板など気にした事も無かった。しかし、今日は。今日だけは──
──ああ、とうとう来たのだ、自分達だけで、マサラ以外の所へ。シアンは込み上げる歓喜に僅かに身震いした
手を繋いだレイナにそれが伝わったようで、些か不安げな顔でシアンを見上げた

「シアンちゃん…?」
「…レイナ」

ぎゅ、と握った手に力を込め、シアンはレイナに微笑む

「改めて──これから、宜しくね、レイナ」

シアンの言葉にレイナは笑顔で、「うん、シアンちゃん!」と頷いてみせた




若葉のトキワ
-歓喜に震う-







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -