三人の手は互いに重なる事なく、それぞれのボールを掴んだ
やっぱりー、と三人は笑い合う。それを見ていたオーキドの表情も綻んでいる

「うむ、決まったようじゃな
 一度この場でボールから出してみるといい。いきなり外に出るのも危ないからの
 出し方は分かるか?」
「えっと、ここのスイッチ押して投げればいいんだよね」

オーキドが頷いたのを確認して、シアン達はボールの開閉スイッチを押す
放った三つのボールは弧を描き、やはり同時に床に落ちた
そして、弾ける音と共に現れた、三体のポケットモンスター
青い体に硬い甲羅を持つ水のポケモン、ゼニガメ
緑の体に植物を背負っている草のポケモン、フシギダネ
赤い体に尾の先端に火を灯している炎のポケモン、ヒトカゲ
ゼニガメはレッド、フシギダネはグリーン、ヒトカゲはシアンが、それぞれ投げたボールの中に居たポケモンだ

「かわいー! 実はね、研究所に来る度にこの子が気になってたの!」
「あ、シアンちゃんもなんだ。僕もこの子が気になってたんだ」
「やっぱオレ達ってバラバラだよなー。こう云う時助かるけどさ」

三人は自分達が望んでいたポケモンを選ぶ事ができ、嬉しそうに談笑している
三匹も威嚇ではない、交友的な鳴き声を上げた

「そうじゃ、ポケモン図鑑を開いてみるといい。記録されてる筈じゃ」

オーキドの声を聞き三人は図鑑を開く
先程の説明通り、それぞれの選んだポケモンのデータが表示されていた
他の二匹に図鑑を向けると、電子音と共に画像が出るが、他のデータは無い。これが捕まえたポケモンと捕まえていないポケモンの図鑑登録の違いのようだ
シアンは足元のロコンにも図鑑を向ける
ゼニガメとフシギダネのように、基礎データだけが呼び出された

「あれ? コンちゃん登録されないよ?」
「マゼくんの手持ちとして認識されておるからじゃよ」
「そっかー、コンちゃん父さんのポケモンなんだ
 …あ、コンちゃん、私のヒトカゲ! おんなじ炎タイプだよ!」

マサラには他に炎のポケモンは居ない。こーん、とロコンは鳴いて、ヒトカゲに近付く
しかし、ヒトカゲはシアンの陰に隠れてしまう
恥ずかしがってるのかな? とシアンが首を傾げると、オーキドは苦笑いを浮かべた

「そのヒトカゲはちょっと気が弱くての。でもシアンにはもう懐いておるようじゃな
 ……おお、そうじゃ、忘れる所じゃった。もう一つ渡すものがあるんじゃ」

ポンと手を打ってオーキドは辺りを見回す
しかし、

「マゼくん、あれは何処に置いたっけかのう」

目当ての物が見付からず、困ったのぅ、と呟きながら頭を掻いた
オーキドの様子にマゼは苦笑して彼の白衣を指で示した

「朝一番に白衣のポケットに仕舞いましたよ」
「あー、そうじゃそうじゃ!」

ごそごそとポケットを探り、オーキドは三人にそれを手渡した
小さい、リモコンのようなもの

「ほれ、ポケモンの擬人化装置じゃ」
「あっ、これってテレビで見た! ポケモンを人みたいな格好にできるやつ!」
「いいんですか、こんな物まで貰ってしまって」
「そんな事気にするなレッド。ワシもこれの開発にちょいと関わったから幾つか貰っとったんじゃ
 人間はポケモンの言葉は分からんからの。それでポケモンを人の姿にすれば、もっと分かり合えて親密になれる」
「やりぃ! オレ、タマムシ行ったら買おうと思ってたんだー。サンキューじーさん!
 なぁ、使ってみよーぜ!」

グリーンの言葉に、勿論! とレッドとシアンは頷く
自分達のポケモンに装置を向けて、スイッチを入れた




始まりのマサラ
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