「シアンちゃん」

寝ている少女の肩を揺らして、赤と白の帽子を被った少年が呼び掛ける
少女はもそもそと動いたが、起きる様子はない。寝返りを打っただけのようだ
少年は息を吐いて暫く考え込んだ。そして、思い付いた彼女を起こす方法は、

「シアンちゃん
 起きないと…キスするよ」

ふう、と耳に息を吹きかけながら囁く事だった

「……むぅ…レッド」
「そうだよ僕だよ。グリーンがこんな事言ったら気色悪いでしょ
 ほら起きて。博士に呼ばれてるから起こしてって言ったのシアンちゃんだよ」
「…ん」

ゆっくりと起き上がる
開ききらない目をぐしぐしと擦り、小さく欠伸をした

「…でも、起こしてって頼んだのレッドじゃなくてコンちゃんにだった筈だけど」

んー…、と伸びをして、シアンはレッドに言う

「ロコンちゃんはもうおじさんと研究所だよ」
「むう、コンちゃんの早起きめ
 まぁいいや。ありがとレッド」
「どういたしまして」

にこにこと笑ってレッドは返す
漸く覚醒してきたシアンは、ベッドから降りて洋服箪笥へ足を運んだ

「…ねぇレッド」
「ん?」
「着替えるんだけど」
「うん」
「……いいや、目覚ましついでにシャワー浴びよ」

洋服を掴んで、フローリングの床をてちてちと歩く
シアンはドアノブに手をかけたが、櫛を忘れた事に気付いて振り返る

「ぎゃ、レッド! 近!」
「どしたの? お風呂場行くんじゃないの?」
「忘れ物したの。てゆか背後にピッタリつかないでよ、怖いなぁ」

ひょいと退いたレッドに言いながら、シアンは鏡台に置いてある櫛を取った
ごめんごめんと言いながら、レッドは相変わらず笑んでいる

「リビングでテレビでも観てていーよ」
「一緒に入るのは?」
「アホか!」

階段を降りて、シアンは風呂場へ向かう
レッドがリビングへの扉のドアノブに触れたのを確認して、シアンも扉を開けた

「んん…おじいちゃま何の用かなぁ」

寝間着の釦を外しながら、シアンは独り言を呟いた

「また研究のお手伝い?
 うーん…にしては時間が早いなぁ、いつも昼過ぎだし」

脱いだ服を洗濯機に放り込んで、シアンは浴室に入る

「冷たっ」

床の冷たさに身震いしながら、脱衣所と浴室とを隔てる扉を閉めて、シアンはシャワーの蛇口を捻った




──「はあー…さっぱりしたぁ」
「早かったねー。じゃ、行こっか」

テレビのスイッチを切って帽子を被り直し、レッドは立ち上がる
シアンは頷いて、レッドと共に、すぐ近くに位置する研究所に向かった




始まりのマサラ
-朝-







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