小さな暗殺者
ふっ、と振り返る瞬間に銃を撃つ。
それは綺麗に左胸に吸い込まれ赤く弾ける。
近づいてきた者には、こちらからも近づく。
全速力で。
体を丸めるようにして、相手の左腹をナイフで刺せばビクリと動きが止まる。
銃弾に余裕があれば、再び銃に手を伸ばす。
なければそのナイフはそのままに、新たなナイフで下顎から脳天へ。

人数が少なければそれで終わる。
多ければそれを繰り返す。
銃は球数を忘れないようにしなければならないが。

何気なく振り向いた男の左胸に向けて銃を撃った。
それは綺麗に男の胸に吸い込まれていった…はずだった。
綺麗な弾道に狂いはない。
しかし、それ以上に綺麗に男は弾道を逸らした。

キィィンと高い音が響いた。
同時に飛び出した自分を見て男は少し目を見開き、銃弾を弾いたナイフを片手に近づく。

「悪いなボウズ、俺は死ぬ気はねぇんだよ」

それは一瞬だった。
ナイフがもの凄い速さで真横を通り過ぎた。
ナイフだけではなかった。

ありとあらゆる刃物が飛んできた。

ギンっとかドンとか一斉に音を立てた後…一斉に静かになる。
壁に張付く身体。
少しも動けないように壁に縫い付けられた身体。

失敗はしてもいい、ただし失敗した瞬間に、成功する方法を考え実行するように。
ケガは控えるように。次の動きが鈍くなる。
死ぬようなヘマをするな。作戦に無い死は労力の無駄だ。
死ぬなら二択だ。作戦の内、または

「…命は大切にって教わらなかったか?」

目標者に捕まった時。

舌を出してかみ切ろうとした瞬間に、口の中に突っ込まれた指を思い切り噛んだ。
グローブの味と、鉄臭い臭いが口の中に広がる。
男にとっては、この出会い方は、最悪だっただろう。



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